2018年12月の
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今年面白かった本

2018.12.30

何といっても面白かったのは「ホモ・デウス」
昨年紹介した、世界的に話題になった「サピエンス全史」のノア・ハラリの続編ともいえる本。
サピエンス全史は題名の通り人類史だけど、ホモ・デウスはこれからの人類の未来について書いた本。
以前、未来工学何て言うのが流行ったことがあったけど、この本はそんなに安っぽいものではない。
これまでの人類の歴史を踏まえ、現代の科学が生み出した生物工学や情報工学が人類に何をもたらすか、人類の未来について広い視野で描いた本。
昨年面白かったのはサピエンス全史だったが、今年も引き続き同じ著者の本となった。
また最近、スピノザ(エチカという本が有名)が見直されているが、17世紀のスピノザと根底で通じるものがある。
それはAI、つまりアルゴリズムをどう捉え、対応していくかということに全く時代の違うスピノザとハラリは考えの基礎を提示してくれる。

サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来
エチカ―倫理学 (上) (岩波文庫)
なお2019年正月1月1日、NHK BS 21:00~、このハラリのホモ・デウスの番組があります。

もうひとつ面白かった本、「特攻セズ 美濃部正の生涯」
第二次世界大戦末期、もしも自分が生きていたら戦争に対しどのようなスタンスを取っただろうかと考えたことがあった。
人間は時代に対し客観的に見ることはなかなかできない。
後の人だって、後の時代の眼鏡を通してしか見ることができない。
果たして自分はどうだったのだろうか?
余り自信がない。

この本の美濃部正は特攻攻撃(いわゆるカミカゼ)の合理性を疑っていたが、上部に対して意見を上奏することさえ認められない中で、あえて反逆した人。
ただ反逆しただけなら、牢屋に入れられ、場合によっては罪人として死に追いやられただろうが、彼は違った。
航空機を使った別の攻撃法、生き返ってくる夜襲を上奏し、夜襲によってそれなりの成果を上げ、戦後も自衛隊を育て軍人として人生を全うできた。

自分が特攻を命じられたらどうするか。
逃げる。
何度も出陣するが、途中故障を起こし引き返し国賊となる。
天皇陛下万歳ではなく、お母ーん言って特攻する。
美濃部のように、効果のある合理的戦闘方法を命がけで提案する。
それ以前に、世の中から後ろ指差されても反戦の姿勢を貫く(あの時代そんなことはほとんど不可能だっただろうが)。
・・・・・
いろいろあるだろうが、やはり自分の行動を決定するのは、
どれだけ世界を広く理解できるかに、先ずはかかっていると思う。
思想信条を超えて美濃部正の生き方は今に生きる私たちに、論理性と自分の信念を貫くことの大事さを示している。
特攻セズー美濃部正の生涯
この本も併せて読むと美濃部をさらに理解できる。
特攻隊振武寮 帰還兵は地獄を見た (朝日文庫)
建築の本です。
「脱住宅 小さな経済圏を設計する」山本理顕+仲俊治さんの本です。
自分も集合住宅の設計をこれまでにも沢山やってきたが、大変共感できる本。
脱住宅: 「小さな経済圏」を設計する

沖縄紀行Ⅱ

2018.12.29

講演は泉流の架構を現した木構造の表現について。
講演が終わり、夜になり沖縄風の建物で「うちなー料理」を御馳走になる。
当然それには泡盛がついてくる。
泡盛は強いから、できるだけ飲まないようにしようと心に決めていたが、あまりにもの美味しさに簡単にその覚悟は崩れ去った。

翌日は沖縄の建築巡り。
先ずは世界遺産、首里城。
沖縄は明治以前は独立国家で、今でも島全体が本土とは相当違う印象があるが、首里城も本土の城の作りとは全く違う。
その違いの一つは城壁にある。
本土の城壁は平面的には直角を基本に作られているが、琉球の城(グスク)はクネクネとうねっている。

しかし直行方向(断面)は意外と真っ直ぐだ。本土の城壁は下の方から段々と勾配がきつくなって弓なりになっている。
それは下の方が土圧が大きくなるから弓なりになる方が自然だが、琉球の城ではそうではない。
この城壁の形態の違いについてはこの後も、ずっと考え続けた。

建物のスタイルはやはり中国の影響を受けているのは一目瞭然。

ディテールもいろいろと面白い。
面白いのは窓の上部に斜めのスカートをはいたような壁があること。

恐らく鴨居から水が入らないようにしたためだろう。

また、日本と清への両属ということから、使節を受け入れる建物はそれぞれの国の様式を取り入れている。
日本の施設を受け入れる建物には茶室もあったりするが、やはり本土の建物とはどこかしら違う。
なんか違うよねー、と思いながら見ていたら、母屋、土庇を掛けた下屋の作りでなく、二つが一体となって、一つの屋根の下にあった。

土庇を掛けないとこのようになるのかと、逆に関心。

沖縄紀行Ⅰ

2018.12.11

47都道府県のうち行ったことがなかったのは沖縄県だけだった。
一度は行ってみたいなー、と思っていたが、何故か沖縄だけには縁がなかった。
ところが、「泉さん、沖縄で講演しませんか?」との誘いがたまたまあり、
即、やります!と返事。

どうも最近沖縄で木造建築が増えてきているらしく、木造について話してくれないかとのこと。
これまで沖縄と言えば、RCまたはブロック造の建物ばかり、と聞いてきた。
台風は来るし、シロアリの被害が多いとのことで、戦後そうなってしまったようだ。
だが、最近の着工件数のうち何と、30%くらいが木造とのこと。
本土からビルダーもどんどん進出しているらしい。
理由は、RCだと少なくとも坪90万はするが、木造だと60~70万で作ることができ、コストが原因らしい。
プレカット工場も4つあるとのこと。
材木は木造に適切な木材がないので、宮崎県辺りから運んでいる。

でもまだまだ本土とは違ってRCによる街の景観だ。

本土のRCや木造が混在したゴチャゴチャした景観から木造を差し引けばこのようになるのか。

初めての沖縄だったが、とっても印象的だった。
ここ2~3回、沖縄レポートします。

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