2017年09月の
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まだスマホ使ってんですか

2017.09.28

最近、電車の中で新聞を読んでいる人はまず見かけなくなった。
が、本もそうで、読んでいる人も思いのほか少ない。
ちょっと前までは結構いたような気がするんだけど。
スマホでなく本を読んでいると時代遅れ?とまでは思わないけど、読んでいる人は熟年が多い。
周りを見渡すとみーんな、スマホ。
そしてスマホの世界に入り込んでいる。

実は、現在ガラケーを使っているが、一時スマホを使っていた。
スマホの出始めの頃で、便利そうだな、とついつい新しい物好きの癖が出た。
しかし使い始めて、これ頭がどうにかなってしまうんじゃないの、と思った。
スマホを触るとダラダラとした時間が過ぎていく。
しかも机に座っているときは、いつもPCとにらめっこで、
さらに電車に乗ってもPCと同じスマホじゃ、頭がおかしくなってしまう。
ということで、またガラケーに戻った。

電車の中ではみんながスマホをいじっているが、
今は、一人でどうだとばかりに、本を読んでいる。
それが気持ちいい。
だから結構、本を読む。

そうしたら、面白い本に出合った。

『ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ』という題名の本で、クンデラの『存在の耐えられない軽さ』をもじった題名だと思うが、これがなかなか面白い。

スマホ(ネット)がダメ、と簡単に言うのではなく、話し言葉、書き言葉、ネット言葉と、言葉の変化をギリシャから現代まで歴史的に考察したネット論だが、話は印刷技術、宗教、国家、近代、紙幣と話が広がる。
それどころか建築空間と言葉の関係にまで及んでいる。
さすが芥川賞作家、文章も読みやすい。
へーそうか!と、あたかも膝を叩くように、感心しながら読んだ、面白い本。


 

ロマネスクを訪ねて Ⅳ

2017.09.24

「プロバンスの三姉妹」と呼ばれる三つの修道院がある。
一つは前回紹介したル・トロネ、それにシルヴァカーヌ修道院とセナンク修道院。
いずれもシトー派の修道院で、12世紀に作られた、つとに有名な修道院である。
この三姉妹の修道院のあるプロヴァンスは自然も豊か、いい季節も重なりとっても美しい。
 車の中の4人は、左右の風景を見ながら、もう有頂天。
右側を見ると、青々とした麦畑の向こうに、多分セザンヌが描いたサント·ヴィクトワール山だろう。麦畑の中にポピーの花まで咲いている。

フランスは農業国だと言われるが、本当にそうだと実感できる。

またバカンスの国。
車がカーブすると突然山岳都市が現れた。近づくと古い、多分何百年も経っていると思しき建物が、よく見るとまだ立派に使われている。このあたりの建物はバカンスに来る人々にも使われているらしいとのこと。
何か豊かだよね~!と思わず言葉がもれる。

そのような風景を見ながらシルヴァカーヌ修道院に着く。
柱がカーブしていて石の重ったるさを感じさせない。

さらに進んだ先のセナンク修道院です。
手前はラヴェンダー畑。

セナンクの地下室。
どういうわけか、上の聖堂もいいが、地下がすごい。

シトー派の修道院には回廊がつきものだが、もちろんトロネやシルヴァかーぬ、セナンクにもある。
この回廊を見比べるのが面白いことに気づいた。
この後にもいろいろな回廊が出てくるが、柱が2列だったり、それがずれていたり、リズムが入っていたり、また回廊のコーナーの納め方がそれぞれ違っていて面白い。
恐らくコーナーの納め方には苦心したのだろう。

まだ旅の始め、シトー派の修道院の配置計画や、これまで知らなかった石のテクスチャー、石が生み出す光など、少しづつ見え始めてきたが、旅はこれから、まだまだ。
ただただ、すごいな~、これすごいよ~と同行の建築家たちは声が弾む。

ロマネスクを訪ねて Ⅲ

2017.09.11

ニース、コートダジュール空港でレンタカーを借り、さー、まずはル・トロネへ。
西に向け高速道路を走り始める。
左下に世界的なリゾート地、ニース、カンヌの見るからにリッチそうな海岸や街が通り過ぎる。
だが、無視。
我々は、ロマネスクを見に行くのだ‼とばっかりに、高速道路をひた走り。
ル・トロネは建築家の間では有名な修道院建築。
何故有名かと言えば、ル・コルビュジェが彼の代表作の一つであるラツーレット修道院を設計するにあたり、参考にしたことかららしいのだが、そんなことはどうでもいい、僕にとっては違った理由があった。
フェルナンド・プイヨンという人が書いた、「粗い石」という本がある。
ル・トロネを建てた工事監督の日記という形で書かれている。
修道士でもある建築家が人間の弱さやモノと格闘し、さまざまな矛盾に責めさいなまれる。
といった精神的格闘だけでなく、技術、予算、今で言うプログラムの解決は今の私たち建築家と同じ地平にあり、身近に中世の建築を感じることができる。
建築の名著の一つ。

前回紹介したミシュランを頼りに、目指すLe Tholonet(ル・トロネ)はニースから180Kmくらい離れたところにある。
Le Tholonetに着いて、いよいよトロネを見ることができると、ワクワクしながら探すがなかなか見つからない。
村の人に、Abbaye!Abbaye!(修道院)と言って尋ねたが、指さしてくれる協会は写真で見たトロネとは似ても似つかないもの。
何処を見回しても写真で見たトロネがない!
ミシュランで来たのに、何故ない?
不安感がモウモウと立ち上がる。誰もフランス語ができないグループ。
もう一度地図を見たら、このLe Tholonetと出発したニースとの間に、Le Thoronetがある。
なんとlとrを間違ってたのだ!!!
また高速道路を出発したニース方面に引き返す。
東京から三島あたりまで引き返すことになる。

Le Thoronetに着いたのは午後、遅くだった。
ヨーロッパは日暮れは遅いと言っても、もう薄暗くなり始めた頃だった。

でもいいこともある。
おかげで観光客もほとんどいなく、静か、ひっそりとして我々が貸し切ったようなもの。

我々4人は静謐なトロネの世界に包まれた。

ロマネスクを訪ねて Ⅱ

2017.09.01

最初にロマネスク建築を見たのは1993年。
もう24年前になる。
レンタカーを借り、建築家4人での旅だった。
車の前に二人、後ろに二人座って、行きたいところに行く自由な旅で、この旅があまりにも楽しかったから、数年後に、この同じメンバーでスペインにも出かけた。

ロマネスク建築を見たいと思ったのは建築雑誌(多分SDだったか)で特集が組まれていて、何かビビッと感じるものがあり、是非これを見たい!と思ったのがきっかけだった。
と言っても、どこにどうやって行けばいいのかわからないので、とにかくまずはいろんな建築や美術書をあさることから始めた。
そうやっていたら、どうもロマネスクの中でもシトー派の建物がいいらしいということが段々とわかってきた。
それでも実際に行くとなると、もう一つよくわからない。
この旅の決定的に重要かつ貴重な情報を教えて頂いたのは、そのころ武蔵美の先生をやっておられた馬杉宗夫先生だった。
焼き鳥屋だったかで、フランス全土の地図に、ここは、という建物の場所をプロットしてもらった。やはりその道の大家に教えてもらったことがよかった。

で、フランス全土の地図での大まかな場所はわかったが、車で旅することになると詳しい地図が必要になる。
そのころはまだカーナビがなかったので、頼るのは地図しかない。
この旅行の前にイタリアへバックパッカーのような感じで行ったことがあったが、その時の道案内に使ったのが、ミシュランの道路地図と、ミシュラン・グリーンガイド。
この二つがあると、どこでも行くことができることを知った。
しかもミシュラン・グリーンガイドの教養レベルは相当に高く、日本のミーハーなガイドブックとは全く違うもの。
しかも、ミシュランの道路地図と、グリーン・ガイドブックは連携していて、遠くの町までは道路地図で、その町に辿り着いたらその先はガイドクックを頼りにすればよいように、論理的に整合性が取れ、地図を信頼してその通りに進めば、確実に目的地にたどり着くことができるようにできている。
さすが、デカルトを生み出した国、と思わずにいられないものだ。

でも残念なことに以前はこの南フランス―プロバンスのグリーン・ガイドブックの日本語版が出ていたが、今では絶版になっている。
でもAMAZONの中古で今でも手に入れることができる。
いい本なので今でも求める人が多いようだ。


 

これに次のこの地図があれば鬼に金棒というわけ。
Atlas Routier France 2014 Michelin Compact Spirale

旅は各ロマネスク教会の目的地と、大まかな日程を組んで、フランスはパリ、そこからニースへ飛んでレンタカーでの2500km旅が始まった。

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