2004年01月の
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白洲家に行ったら天井を見て。

2004.01.06

まずは新年のご挨拶。あけましておめでとうございます。
昨年は本当に忙しい一年でした。
仕事漬けのあっという間の一年でした。
それでもイギリスに行ったり、講演先、出張先で朝まで飲み明かしたりして それなりに楽しい一年でもありました。
正月は爆睡の日々でしたが、そんな合間にゴロゴロしながら、
たまたま手に取った「白洲正子自伝」(新潮社文庫)を読みました。 白州さんは皆さんご存知のとおり、超目利きです。
芸術新潮(ゲーシン)に連載してたものを、一冊にまとめたものです。
自伝ですから、彼女がどんな環境で育ったか詳しく書かれています。
それはとんでもない程の、すっごい環境の生まれなんですね。
彼女自身が伯爵家の生まれで、周りに歴史の教科書に出てくるような、政治家、芸術家、文学者が小さいころからぞろぞろと日常的にいます。
昭和天皇まで出てくる程。
なるほど、あー言う人はこんな環境から出てくるモンなんだなーと、妙に納得。 ところで、白洲正子さんの町田にある自邸が公開されていることも、ご存知の方は多いと思います。
公開されて早速、見に行きました。
古い民家を改修したものですが、いたるところに彼女の目に適った、焼き物をはじめとした骨董が飾られた素晴らしい空間です。
是非一度たずねられることをお勧めします。
ただ訪ねたら、是非天井を見てください。
民家を改修して住むことが現在はやっていますが、
経験したことのある人なら、民家がどれだけ寒いものか分かります。
そんな民家で、白洲家はどんな冷暖房設備をしていたのか建築家としては興味津々なところでした。
エアコンを壁にぶら下げるなど白州さんの美意識に適うわけがありません。
で、天井を見ていたら、ありました、ありました。
黒く煤けた天井板にあわせるように、黒い空調した空気の細い吐き出し口が各部屋に分からないように取り付けてあります。
ただその空調された空気を各部屋に送るにはダクトが必要です。
見たわけではありませんが、おそらく天井裏には、
その空気を送るダクトが這いずり回っていることでしょう。
あのすばらしい空間を作るには、そういう裏舞台があるんです。 さらにもうひとつ。
白洲家には網戸がありません。
確かに網戸は不細工なものです。
が、周りは蚊がいっぱいいそうな森の中。
多分、蚊のいる夏はガラス窓を締め切って、空調した部屋にいらしたのだろうなー、
と白洲邸にて建築家はかってに想像してしまった次第です。

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