2010年08月の
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3泊4日巡業ー6

2010.08.28

修学院離宮の後は桂離宮。
桂離宮は言わずと知れた日本美の極地、といわれる。
晴れ晴れとして、すがすがしい美しさ。
2度目だけどハッとさせられる美しさを随所で発見させられた。

でも、この桂離宮にもいろんな意見があり、
例えば「つくられた桂離宮神話(井上章一著)」のような見方もある。
それによると、
「タウトに始まる桂離宮の神格化が、戦時体制の進行にともなうナショナリズムの高揚と、
建築界のモダニズム運動の勃興を背景に、周到に仕組まれた虚構」
とされる。
さらに前書きには、桂離宮に「大変がっかりした」と書いてあるくらい。
こういう批判精神そのものには敬服するが、やはり桂離宮は美しい、と僕は思った。

もっとも、僕が最初に見たのは昭和の大改修の後、1985年頃だったが、
あまりにもきれいで、きれい、きれい過ぎるという印象があった。
最近復刻版が出た、石元泰博さん撮影の「桂離宮」はそんな甘っちょろさがない。
その撮影は大改修の前、1950年代。
だからモノクロの撮影。
今見る桂離宮とは印象が随分違う。

まっ、いろいろあると思うが、やはり桂離宮は日本建築の美の重要な一つのあり方だと思う。
次回も桂離宮を書きます。

3泊4日巡業ー5

2010.08.24

3泊4日巡業の3日目は日大の先生方と修学院離宮、桂離宮へ。

修学院離宮はまずデッカイ堤防で溜池を作り、
天上の池を作ったところがミソ。
上から見ると、穏やかな水面の下に京都の街が見える。
そりゃー、いい気分。
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そして池への斜面にはそれもデッカイ大刈り込みにしている。
大刈り込みとは何種類かの木を寄せ集め、刈り込んだもの。
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大刈り込みは最近ではお金をかけた公園、
例えば東京だと駒沢公園などで見られるが、
修学院の大刈り込みの大きさは抜きん出ている。

公園の刈り込みは機械でやっているが、
さすが宮内庁、というか京都というか、手技です。
なぎなた(のようなもの?)で木の間に入って横にバサバサと切っていく。
だから刈り込みの高さは大体みぞおち位。
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ところで、修学院離宮には何か物足りないものがある。
それは池を中心とした中心性はあるが、
その中心性を作る段階性やシーケンスが希薄。
要は単純。
桂離宮のように複雑に計算された仕掛けがない。
それはそれでいいと思う人もいるかと思うが、
僕にはチョット物足りないな。

3泊4日巡業ー4

2010.08.20

話はまた丹波篠山に戻ります。
かつて茅葺屋根だった民家の屋根に、トタンをのせている風景が日本の多くの地域で見受けます。
茅葺の時はもっときれいだっただろうな、と思うのが普通ですが、
ここ篠山のトタン屋根はなかなかです。
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菱葺(ひしぶき)という葺き方ですね。
菱葺きは四角い鉄板をを45度回転させてつなぎます。
ところが篠山のデザインが変わっているところは、
菱葺きの角の一つおきに、プツプツと何か小さなものが付いています。
これって何?

車の中でこの用途について話題になった。
1.急勾配の屋根だから上がるためには何か引っかかるものが必要だからという意見。
でも人の重さに耐えるほど強くなさそう。
2.雪止め、あるいは雪割りという意見。
でも篠山はそんなに雪が深くないとのこと。
どれも違うみたいだ。

どなたか分かる人はいますか?

3泊4日巡業

2010.08.18

ところで先日書いた版築(はんちく)のこと。

10年ほど前、中国、雲南省で道に迷い目的地にたどり着けなかったのだけど、
迷ったおかげで、実際に版築の施工をやっている建設現場に遭遇したことがあります。
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息子かどうかわからないが、下にいる人が土をスコップでヒョイと放り上げ、
上のお父さんらしい人?が堰の間の土を杵で叩いて締めています。
下から放り上げる土が100発100中堰の中に入るのは、見事なもの。
下の写真は今にも入る土が写っています。
左下にはスコップの一部が。
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セルフビルド(自力建設)そのものです。
土はその敷地の土でエコそのもの。
消費するのは人間の体力のみ。

日本のサラリーマンではこんなことはできないだろうな。
第一時間がないし、体力気力がない。
でもお金で作ることができる。

エコって貨幣経済と大いに関係ある。
それは一つに、エコが叫ばれるようになったのは貨幣経済の増大の結果。
もう一つは、エコも商売になるということ。

3泊4日巡業

2010.08.14

2日目は丹波篠山(ささやま)へ。
篠山は瀬戸内海と日本海の間にある山深いところ。
篠山で左官の名人、久住さんに会うため。

建築関係者では久住さんの名を知っている人は多いと思うが、
久住さんは左官の名人というには、それだけでは何か物足りず、
左官を中心に置きながらも、左官の領域を超えた視野からそれを見ている人、
とでも言えばいいのか。

篠山でいろんな灰屋(はいや)を案内してもらった。
灰屋とは、植物を燃やした灰の肥料を作るための、土でできた小屋。
もちろん化学肥料が出回った現在は使ってない。
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日本ではめったに見れない土の力強さがある。
草を建物の中で燃やすわけだから、土でできている。
壁は土を積み上げながら横から叩いて作る。
(これは版築ではない、版築は型枠を作り上から叩く)。
屋根の骨組みは木造だが、土で仕上げて耐火構造にしてある。

土を積み上げた建築はここ篠山だけでなく、
国東半島や、長崎地方でも見ることができるが、
美的な最高峰は法隆寺の版築の塀。
遠い、遠い古代、大陸から流れてきたの日本の建築の源流を思い浮かべることができる。

篠山の灰屋は朝鮮半島の新羅に源流があるとか。
久住さんは最近、土を通して歴史学者の領域まで達したようだ。

3泊4日巡業

2010.08.12

西の方の仕事・用事をまとめて3泊4日の旅。
どこもここも暑く、汗ダクダクの旅。。。。

1日目は宝塚で作っている建物の監理のため。
せっかく関西に来たんだからと、
その日の夜は仕事を手伝ってもらっている人と三人で京都に泊まり、
美味しいものを食べよう、ということになった。

祇園にある「きさらぎ たかし」へ。
この店は大学の先輩に美味しいから一度寄ったらと、かつて紹介を受けた店。
京都の店によくあるようには気取ってないが、
でも本当に美味しい。
黙って座っているといろいろ出してくれる。

この日は京都のこの季節の名物、鱧(はも)料理が出てきた。
話には聞いていたけど、目の前で見る鱧料理は大変。
重い専用の包丁で細かく身を刻んでいく。
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包丁で刻むといっても本当に薄い皮一枚を残して繋がっている。
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後はバーナーで焦がして、どうぞというわけ。
美味しい!
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それにこの料理には日本酒が合うこと、本当に合う。
それも青竹ごと冷やしたお酒。
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京都はやっぱり都だな~。

5尺7寸2分 Ⅲ

2010.08.01

「江戸東京たてもの園」の第3回です。
ここにはいろんな建物があるけど、
僕の一番のお気に入りはこれ。
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「鍵屋」という飲み屋さんです。
建物自体は江戸末期のもので、かつては下谷の言問い通りにあったらしい。

もちろんお酒が嫌いなわけだはないからこの建物が好き、というのではなく、
こんな店があったら、
「ちょっと寄ろうよ」と、ツイツイは入ってしまいそう。

入口の上の庇はまず、板葺きで、その上が瓦の庇。
バリアーフリーでない石の段を2段あがり、
敷居をまたぎながら暖簾を片手でヒョイとかき分けて入る。
中は電球で薄暗く、カウンターは黒光りしている。
お品書きはほんの数種類。
注文はいつもの通り・・・・。
(やっぱり好きには違いないか)

全然コジャレてない。
ここに来る度に、
今僕らは、
どうしてこのようなコジャレてない建物(インテリア)を作ることができないのだろうか、
と考えてしまう。

釧路の「炉ばた」、神楽坂の「伊勢藤 (いせとう)」もこんな店だったなー。
「鍵屋」は江戸東京たてもの園の一番奥にあります。
動態保存にすればいいのに。

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