2014年12月の
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今年面白かった本 BEST

2014.12.31

飛行機や新幹線での出張の機会が多かったせいか、
おかげでたくさんの本を読むことができた。

以前より本を丁寧に読むようになったが、面白かった本は2回、3回と読み返すこともあった。
ちゃんと本を読むって気持ちがいい。
そんな中で今年面白かった本のBEST3。

BEST1
昨年の出版だが、最近かなり注目されるようになった、
白井聡「永続敗戦論」。
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今年、第二次世界大戦終戦(でなく敗戦)から70年になるが、
この70年間の日本の世界における立ち位置、振舞、
また私たち自身のそれへの認識に対する驚くべき深い洞察と批評。
時代が変わろうとしている今、この本は重要な批評の出発点となるに違いない。

BEST2
「永続敗戦論」が思想の書とするなら、
かなり近いテーマを小説で扱ったのが、
奥泉光の「東京自叙伝」
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小説のようで、SFのようでもあり、映画にすぐにできそうな娯楽性もある。
読んでるうちに、俳優のキャスチングも自然と思い浮かぶよう。
が、批評性に富んでいて永続敗戦論もそうだが、丸山眞男の<無責任の体系>を思い起こさせる。

BEST3
次は建築関係の本で、
昨年亡くなった建築史家の鈴木博之さんの「庭師 小川治兵衛とその時代」
最近NHKで京都南禅寺界隈の別荘群について何度も放映していたが、、
その庭などを作庭した小川治兵衛を語りながら、
明治という時代を浮き彫りにした、作庭論に留まらない本。
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それにこの本も面白かった。
同郷(熊本)の渡辺京二さんの自己を語った「無名の人生」(文芸春秋)
この方は著書の「逝きし世の面影」で無名どころか有名な方。
誠実な肥後モッコスの、しみじみとした言葉が心に残った。

西方寺 湘南亭 Ⅲ

2014.12.28

西方寺の庭の苔は素晴らしいが、
それを生かしているのは、地面の高低差にある。

5㎝前後の小さな高低差、
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次に50センチ前後の高低差、
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さらに3~4メートルくらいの大きな高低差、
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この大、中、小(寸、尺、間)の高低差が同時に混在し、
自然の風景を作り出している。

のんべんだらりと平らな庭だったら、この魅惑するような美しさは生まれなかったに違いない。

で、実は西芳寺の中にある湘南亭も、この高低差が生かされている。
これは次回。

西方寺 湘南亭 Ⅱ 

2014.12.05

紅葉の落ち葉で苔が見えないのは庭の入り口あたりだけ。
庭園に入ったら紅葉の木はそこそこで、程よいくらいの紅葉の落ち葉。
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やっぱり西方寺の苔は凄い。
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この庭にはかなりの手が入っているに違いないが、それを感じさせない自然の本質的表現。
夢窓疎石による作庭らしいが、苔生した現在の風景になったのは江戸も末期だったらしい。
どのような経緯を経て、作為を感じさせない現在の姿になったのか、日本の作庭の秘密があるのかもしれない。
これに比べると桂離宮などはまだ技巧的。
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西芳寺 湘南亭☆☆☆ Ⅰ

2014.12.04

西芳寺とは、かの有名な苔寺(こけでら)のこと。

数年前よりどこに建っていているのか、何という名の建物かさっぱりわからないが、とっても美しい建物の写真を持っていて、いつかは見てみたいな、と思っていました。
分かるのはおそらく茶室で、京都方面にありそう、というぐらいの、僕にとっては謎の建物。

ある建築雑誌の編集者に「この建物、何という名の建物か知っている?」と聞いたら、
その人は知らなかったが、多少は古建築にかかわった知り合いの編集者に聞いてくれ、
この建物が西芳寺の中に建つ湘南亭(しょうなんてい)とわかった。
さらにその編集者が、
この写真を撮ったと思われるカメラマンに「泉さんが湘南亭を見たがっている」と伝えてくれ、
さらに、このカメラマンがこの湘南亭に強く惹かれている京都在住の建築家にそのことを伝え、
さらに、その建築家が出入りの植木屋に伝え・・・・・・・と、
間に何人もの人が入って、何と幸運な伝言ゲームで湘南亭を見ることができるようになった

で、折角だからと何人かの友人を誘い、先日その西芳寺へ行ってきた。
西芳寺へ行ったことがある人は多いと思うが、拝観するには西芳寺の本堂で写経をさせられる。
西芳寺はハガキにて拝観の申し込みをする必要があるから、
せめて数十人の人かと思っていたら何百人の人がお堂で一斉に写経をやっている。
次の写真はお堂の中からあふれ出た写経する人たちです。
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この季節は青くむした苔の上にも真っ赤な紅葉の葉っぱがパラパラと落ちてきれいだろうなー、と期待していったが、
入り口のあたりでは、何と苔が隠れてしまうほどに紅葉で真っ赤な地表面。
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せっかく苔寺に来たんだから、紅葉より苔、と思ったんだが、
さてさて、どうなりますことやら。
続きをご期待。

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