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2010年11月の
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スリランカ紀行 Ⅵ 新旧の彼岸
2010.11.30
建築に限らず芸術には新しさが求められる。
しかしバワの建築を見ていると「古い、新しい」を超えた、新旧の彼岸がある。
建築において新しいとはモダニズム。
確かにバワの建築はベースにモダニズムがあることは否定できない。
しかしそのモダニズムにはスリランカの風土や歴史を内包した大きさがある。
以前書いたようにバワの建築にはよく骨董品が置かれている。
それだけでなく、スリランカの民家のモチーフがさまざまなところで顔を出している。
スリランカの民家には熱帯の蒸し暑さから逃れるための中庭がよく見受けられるが、
空がのぞける面積は最小に制限され、必要な光と通風が確保されている。
バワが設計したクラブハウスの中庭です。
リゾートホテルの中庭。
大学の校舎のほんのわずかな屋根の隙間。
伝統的な屋根や柱もよくつかわれている。
古い柱の腐った部分はモルタルで根継ぎをして使っている。
歴史や風土を内包することによって、現代建築にはない豊かな建築を作っている。
スリランカ紀行 Ⅴ 建築とその他の芸術との間
2010.11.25
バワの建築は、建築とその他の芸銃が連続的していると書いたが、
建築とその他の芸術との間を埋める試みもなされている。
窓は建築そのものだが、それだけでも美しい。
階段室にあけられた開口だが、彫刻的な美しさがある。
洗面室、コンクリートに便器を埋め込んだり、コンクリートで棚を作ったりして、彫塑的に構成される。
テーブルは葉っぱの形をモルタルに転写したもの。
この模様は椅子や敷石などいろんなところに使われている。
バワのオリジナルの照明。
バワはこのほかにもいろんな照明器具を作っている。
椅子も…。
バワは建築自体にも彫刻的造形を、また家具を建築的に造形し、
照明や、家具といった建築の周辺的なものにも手を広げている。
スリランカ紀行 Ⅳ 建築の一部としての芸術品
2010.11.23
バワの建築は外構と芸術品が一体となっていると書いたが、
絵画や彫刻、陶芸作品、あるいは骨董品がいろんなところに散りばめられている。
近代建築でも広場にポイントとして置かれるようなことはあるが、
それは他の作品にもおきかえられるようなもので、
それでなければならないものではない。
芸術作品を無視しているわけではないが、
建築と芸術作品が一体となって空間を作り上げることはほとんどない。
しかしバワにおいてはそれが一体となって考えられている。
バワの別荘の一部です。
バワの別荘の二つの庭をつなぐ建築に書かれた絵です。
次はバワの自邸。
このように見ていくとバワにとって建築と芸術品が別々なものとか、
あるいは建築を引き立たせるものとかでなく、
建築とその他の芸術が連続して存在している。
スリランカ紀行 Ⅲ 身体と空間の交感
2010.11.19
バワの建築の特徴の一つは建築と外構工事、芸術品が混然一体になっていること。
バワの仕事に協力してしていた弟の住宅だけど、
門から建物までの長いアプローチは背の高い両側の熱帯植物でキュッと狭め、人を迎え入れてくれます。
さまざまな植物を植えることで刻々と変化する風景と同時に、カーブしたこの道の先がどうなっているのだろうかと期待を持たせられる。
次はバワ自身の別荘で、屋外に面した吹きさらしのダイニングです。
ダイニングの向こうには池があるのだけど、その途中に見事な木が植えられている。
この木まではダイニングからフラットに床面がつながるが、その先はスロープになり池え落ち込む。
そのことによってダイニングから延長する木までの連続した空間が生まれる。
このような仕掛けはあらゆるところに、というか敷地全体にわたって計算されている。
おそらくバワは建築を平面図で考えたのではなく、シーンで考えたのだろう。
だからバワの建築は平面図からは読めとれない豊かさがある。
と言って単なるシーンの結合ではない。
変化するシーンの関係性によってさらにシーケンスを生み出す。
通路を狭めたり広げたり、天井を高くしたり低くしたり、さらには歩く正面に何らかの風景を作ったり…・と。
そのような通路の先の格子と庭です。
格子も美しい。
現代建築が失ってしまった身体と空間との関係です。
スリランカ紀行 Ⅱ 共感される建築
2010.11.14
バワの作品をたくさん見たけど、まずはカンダラマホテル。
バワはアジアンリゾートの原型を作った人とも言われる。
(バワはリゾートだけでなく住宅や、オフィスビルもたくさん作っているが、それは後日)
何れにしろ、とにかく人を理屈なく喜ばせる建物だ。
樹木でおおわれた建築、というのを建築家は一度はイメージするものだ。
そんな建物を実際にバワは具現化した。
ただ建築はイメージすればできるというものではなく、相当の問題解決があって出来るもの。
例えば、植物で建物をおおうのはいいが、一方部屋からの眺めを植物が遮らないようにするにはどうしたらよいか、といった問題がある。
それは主としてお風呂の前に目隠しとして植物が利用され、ベッドルーム前には植物を茂らせていない、等さまざまな問題を解決していることが読み取れる。
バスに入っていると突然猿が。
手すりも美しい。
廊下を歩いているとこんな模様が。
カンダラマホテルではもっとたくさんの写真をのせたいくらい素晴らしい場面があった。
バワがリゾート建築でも成功したのは、このような人を喜ばせる力があったからだ。
ところで、我田引水になってしまうが、
次の写真は僕が設計した「泰山館」。
バワほど徹底していなかったが、同じような建築への思考があったと思う。
同じような思考があることを発見しうれしかった。
どちらも1990年初頭に建った建物だ。