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2017年05月の
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いい形は いい型から
2017.05.21
つい最近完成したばかりの住宅の2階には中庭(パティオ)があります。
そのパティオの床はタイル貼。
タイルは水平の床面だけでなく壁面も少し立ち上げていますが、Rを取って(カーブにして)優しい感じに仕上げている。
角が直角より断然柔らかい感じになる。
でもこのように施工するのは大変。今時、こんな仕事をする職人はほとんどいなくなった。
そこで考えたのが、タイルを張る下地のモルタル面を正確に作っておけば、タイルはそれに倣って張ればいい。そのためにモルタル面の断面の型を作って職人に渡す、というもの。
これがその型(定規)です。
赤い線がモルタル面で、緑の線がタイルの仕上がり面。
左上のベニアが実際に使う型。
下側のカーブがモルタル面、上のカーブがタイルの仕上がり面。
この型(定規)でコンクリートの上に置いたモルタルを引きずっていけばタイルの下地が正確にできるはず。
そしてタイルを貼ったら、上側のカーブでタイル面を修正する。
この型を職人に渡すときに役立つ?と聞いたら、役立つかな~?、だって。
仕事が終わって、もう一度聞いたら、役立ったよ!とのこと。
このような七面倒臭い仕事を職人にやってもらうには、こちら(設計者)もそれなりのことをやるしかない。
リンク、リンク、リンク
2017.05.14
東京の高級住宅地に建つ家の風景はとっても閉鎖的。その閉鎖的な様子に寂しさを感じる。家の中が見えないように、道路に面して窓が少なく、閉じたガレージのシャッターだけがドバーッと道に面し、余計に拒絶感がある。何も家の中で悪いことをしているわけではないだろにとか、余程世間に知られたくない秘密をお抱えになっているのだろうか、と思いたくなる。
通りに面して窓が少ないから、道行く人とのつながりも弱い。恐らく近所の人との付き合いも少ないに違いない・・・。そんなことが以前から気になっていた。
そこでできた最近作です。
バルコニーが道に面して、通りとのつながりを作っている。
夜になると家の光が道行く人にぬくもりを感じさせる。
敷地の中でも、家と外部空間との繋がりを作っている。
家の中も階段のある中廊下を挟んで部屋と部屋がつながっている。
何となく家族の気配が感じられる。
でも、トイレは光を抑えた小さな窓になって、たまには孤独に浸る。
ところで、
この家の窓には秘密がある。
あまりにも窓を道路に開くとプライバシーが損なわれ過ぎる。
それをうまく調整する仕掛けがある。
それは次回までのお楽しみ。
カラマツの壁
2017.05.07
サンフランシスコから金門橋を超え、北の方に車で4時間ぐらい行ったところにシーランチ・コンドミアムという、建築家の間では有名な建物がある。チャールス・ムーアという建築家が設計したもので、50年ほど前の木造の集合住宅。アメリカでは国宝級の扱いの建物。
学生の頃、超話題の建物だったが、見れるもんなら見てもいいか位の、そんなに積極的に見たい建物ではなかったが、たまたまサンフランシスコからボストンに行く飛行機に乗ることができずに、一日予定が空いてしまい、じゃーシーランチでも見てみるかと、タクシーの運ちゃんと料金交渉をし、見に行くことになった。
建物の前まで来てやはりわざわざ外国から来て見る程のものではないな、思っとた。しかし良かったのはレッドシダーという杉を壁、天井にぐるりと全部使った空間がよかった。開口部も抑えて一方向だけからしか光が入らないので、何とも空間に深みがあった。
それからしばらく時間が経ち、シーランチのレッドウッドのことは忘れていたわけではなかったが、昨年愛媛県に用があり、たまたま道路沿いの材木屋でこのレッドシダーの壁材を売っているのを見つけた。見れば見るほどに美しく、あのシーランチの壁、天井の美しさがムラムラと思い出された。
しかしメチャ高く、また自分にはできるだけ国産材を使いたい趣旨もあり、躊躇していた。そんな時、国産材であるカラマツの無節と出会い、その製材の仕方ではあのシーランチ風になるのではと、チャレンジしてみた。そうしたらお試し程度の面積だったが、これからもっと大々的に使っていけそうな、うれしい結果が出た。