蚯蚓のつぶやき

2010.10.05

「蚯蚓のつぶやき」
蚯蚓は、みみず。
「蚯蚓のつぶやき」は河野通祐という建築家が書いた自伝です。

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河野通祐といっても、この建築家の名を知っている人はほとんどいないでしょう。
生まれは1915年、亡くなったのは10数年前らしい。
生きているときに書いた本だから亡くなった日付がない。
サブタイトルには「無名建築家の生涯」と書いてあります。

土浦亀城事務所出身で、福祉建築の設計を主にやっておられた方だ。
本を読んでいると土浦事務所出身だから、以前紹介した松村正恒さんのことも出てくる。

僕はたまたまだが、
若かりしころ日大の助手をやっていて、この河野さんが非常勤講師で来ておられて会ったことがある。
ただいつもコーヒーをお出しているだけで、何か話した記憶はない。

河野さんの自伝「蚯蚓のつぶやき」がどういううわけか僕の本棚にあった。
この本があることも忘れていたし、なぜここにあるのかも思い出すことができなかった。
又、お目にかかったことはあっても、河野さんがどういう方だったか、何も知らなかった。
この本なんだったっけ?と立ちながらパラパラと読んでいてら面白く、思わず最初から丁寧に、味わい深く全部、読んでしまった。

小さいころ両親を無くし大変苦労をして建築家になられた方だが、
とっても心が綺麗な人だ。
又建築を通して人々に何ができるかをちゃんと心に刻んでおられた方だ。
こんな建築家は珍しい。

ここのところ松村正恒(無級建築士自筆年譜 )さんや、この河野通祐さんのように歴史に名を残すような建築家でない人の本を読んだが、
余ほど有名建築家の本より、ずっと面白い。

若い建築家の皆さん、この本を読むと建築家にもこのような尊敬できる生き方があることを知ると思います。