捨己の建築

2010.03.21

雑誌の取材で名古屋の八勝館へ。
と言っても八勝館って何?と思われる方のために簡単に説明すると、
かつては魯山人も常宿にしていた旅館で現在は料亭になっている。
八勝館には堀口捨己(すてみ)という建築家が1950年に作った、
「御幸の間」と呼ばれる素晴らしい建築があります。
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昭和天皇は終戦後、日本各地へ復興視察と国民を励ますために巡行されたが、
この「御幸の間」は名古屋への巡行を契機に宿泊所として作られたものだ。

日本の巨匠と呼ばれる建築家は何人もいるが、
この「御幸の間」を設計した堀口捨己(1895~1984)は、
巨匠の中でも、実は僕が最も尊敬する建築家。

近代建築を見て感動するということはあまりないのだが、
八勝館「御幸の間」には十数年前一度訪れたとき、いたく感動した。
その時はこの建物を見たくて、昼ご飯を食べることで中に入ることができた。
料亭だからそれなりのお値段だったが奮発しての昼御飯。
(建築の勉強にはお金がかかる)
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今回久しぶりに訪れたがやはりいい。
数寄屋建築と言ってしまえばそれだけだが、論理と身体性が溶け合って自由自在。
堀口捨己は大学の研究者でもあったから、
自作においても論理的な空間構成をしていることが読み取れる。
と言って理屈っぽくなく、その論理が身体的空間を生み出すことに生かされている。

僕もこのレベルまで到達できるか、
叱咤される思いがした。

皆さんもぜひ八勝館「御幸の間」を体験してみてください。