美しいタワーになれるかⅡ

2010.02.05

前回書いた「君たちは東京タワーと、エッフェル塔ではどちらが美しいと思うかね?」と、
僕らに問うた先生(近江栄先生)の話の続き。

この話は大学の建築学科に入ってすぐの授業でだった。
高校までは一方的に教え込まれる授業だったが、
自分はどう考えるか、という質問自体が新鮮で、
大学の授業はさすがに高校とは違う、とうれしく思った。

で、その質問に対しかなりの学生が東京タワーを支持していたようだ。
それに対し先生は、
「これから建築をやろうとしている君たちは何を考えているんだ」と言わんばかりに不機嫌そうに、
東京タワーよりエッフェル塔が美しいと思う理由を話し始めた。

「まずエレベーターの付き方を考えてみろ。
東京タワーは4本の脚の真ん中にエレベーターがぶら下がり、
イチモツをぶら下げているようなもんだ。
だが、エッフェル塔は脚元をスッキリさせるため、
エレベーターをわざわざ脚の中に入れ、斜めに走らせているではないか…・。
建築のデザインを考えるとはそういうもんだ・・・・。」

建築のことが何も分からなかった頃だけに、
この話は強烈な印象として残っている。

ところで、後輩の若い建築家に近江先生から昔、先のような話を聞いたと話したら、
「僕も聞きましたよ!」とのこと。
先生もこの話が気に入っていたのだろう、30~40年間話し続けていたのでは。