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ガラシャの夫、細川忠興(三斎)
2020.02.28
僕が生まれたのは熊本県八代市。
穏やかな不知火海に面した温暖ないいところだが、
熊本からさらに遠い田舎だ。
でもこの田舎は、田舎にしてはチト文化的なところがある。
それは何故かと言えば、今大河ドラマでやっている明智光秀と多少とも関係がある。
才色兼備の誉れ高いガラシャは その光秀の子供。
ガラシャは戦国時代の武将、細川忠興と結婚するが、忠興は武将でありながら 茶人、利休七哲の一人でもある。
その忠興は僕の田舎の八代市で隠居し、八代でなくなった。
そのような関係で、八代には茶道や能の文化が伝わった。
高田焼き(八代焼)という、白い土を象嵌した緑がかった渋い灰色の焼き物があるが、それを発展させるなど、忠興は工芸品の発展にも寄与した。
ガラシャ夫人の凄—い字です。
僕が通った八代第一中学校はかつての八代城跡の中にあり、忠興ゆかりのものがある。
その一つに臥龍梅(がりょうばい)という梅の古木がある。
名の通りに、龍が地に伏しているような梅だ。
その梅は細川忠興が植えたとのことだが、そんな謂れがあることなど、田舎にいる頃は知らなかった。
建築の設計をするうちに茶室にも興味を持つようになって、利休七哲の一人が八代にいたことを知り、感激したことがあった。
今、鎌倉の葉山で建てている住宅の庭に梅を植えることにしている。
八代の思い出からそうしたわけではないが、是非、古木の梅にしたいと庭師と相談している。
僕の端正な和の空間が好きなのは、八代で育ったことと関係しているかもしれない。
日本木造建築辞典 構法の歴史
2020.02.18
このような本があったらいいな~とは思っていたが、実際に出るとは思ってなかった。だからこの本を手にした時は本当にうれしかった。
日本の木造建築の構法の歴史の本だ。
日本の木構造の歴史が掘建→長押→貫→筋交と変化していったことくらいは知っていても、それでは断片的だ。
古い建物を見るときには、より知識があるとその建物の理解が深まる。例えば先の掘建→長押→貫→筋交へ歴史的変化だけでも知っていると、知らないのでは全く違った目で見ることができる。
しかしたったそれだけでは、ほんの部分的な理解しか得られない。なぜここはこうなっているのか、理解できないことが多々あるる。それを目の前にして自分で考えて、あっ、そうか、こういうことでこうなったんだと気づき、先人たちの知恵に驚かされることが、たまにはある。しかしそれには限界があり、本を通してしか得られないことが多い。
この本はそんな本だ。なにも頼まれなくてこのような書評のようなこと書いているわけではないが、この本を手にしてうれしかったので、ついついこのようなことを書いてしまった。
ただし、5∼600頁の大部の本で、お値段も高いが、木造をやる人は手にした方がいい本。
図説 日本木造建築事典: 構法の歴史
而邸 ♯22
2020.02.05
今年は暖冬だけど、冬は冬。
而邸(自邸)の南面は少し東にずらしている。
だから朝の陽ざしが、リビングの中に沢山入り心地良い。
冬とは言え、日曜日の朝、 陽光に満ちた部屋の中で 「日曜美術館」を見る。
たかが陽光、でもこの陽光が幸せな気分にしてくれる。
建物の向きって、とっても大事。
メタセコイア白金台 Ⅱ
2020.01.19
先日完成した集合住宅「メタセコイア白金台」の外観は真っ白、アプローチも真っ白です。
アプローチの上部には藤棚が架かっていて、将来、真っ白い外壁を背景に緑の葉と藤の花が浮かび上がり、その下をくぐって玄関に入ります。
そして集合住宅の門扉を開けると、3階分吹き抜けた円形のホールが現れます。
円形のホールに沿って螺旋の階段が現れます。
壁も階段も、天井も真っ白、床は白いモザイクタイルです。
階段を上がり上を見上げると、
トップライトから光が降り注いできます。
2019 今年読んだ面白い本
2019.12.30
恒例、暮の「今年読んだ面白い本」です。
相変わらずの乱読ですが、
今年読んだ中で最も面白かったのは、
最初の布施英利さんの本は、解剖学という学問があることは知っていても、その何たるやかは全く知らなかった。
解剖学って、世界観、思想なんですね。
へー、そういうことなのか、と思わず膝を叩くような面白い本。
・布施英利人体 5億年の記憶: 解剖学者・三木成夫の世界
2番目の加藤典洋さんの本は、私たちが生きるこの現代を形づけた憲法がどのようにしてできたのか、教えてくれる。
これも、へーそういうことなのか、と現代のありようや、今に抱える問題は、その時に遡ることにあるのか、と思わず膝を叩く本。
・加藤典洋9条入門 (「戦後再発見」双書8)
内田樹さんの本はどれも、いつも難しい話を平易に解説してくれる。
これまでにも随分勉強させてもらった。
・内田樹そのうちなんとかなるだろう
この國分さんも同じく、例えば難解なスピノザ哲学を読むうちにどうにか理解でできるようにしてくれるが、実はこの本も、タイトルは「原子力時に…」となっているが、超難解なハイデッカーの哲学の解説しながら、知らず知らずのうちにハイデッカーの世界を理解させくれる。
・國分功一朗原子力時代における哲学 (犀の教室)
以前から速読が苦手だったが、かの平野さんが遅読の勧めを堂々とおっしゃている。
速読より、遅読だよねー、と納得し、安心した。
・平野啓一郎本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文庫)
建築系では昨年の中谷さんのセヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間に引き続き、やはり同じ中谷さんのこの本2冊。
・中谷礼仁動く大地、まいのかたち――プレート境界を旅する
・中谷礼仁未来のコミューン──家、家族、共存のかたち
最後に僕が初めて本の帯を書かせてもらった松井郁夫さんの、人生をかけた古民家絵の思いを熱く、豊富な知識を開示した本。
・松井郁夫古民家への道
メタセコイア白金台
2019.12.28
港区白金台に「メタセコイア白金台」という名の賃貸の集合住宅が完成します。
この集合住宅に入ると、3層吹き抜けの、真っ白い螺旋階段室が迎えてくれます。
昼間は最も高いところから光が降り注ぎ、また夜は照明で幻想的な雰囲気になります。
賃貸の申し込みはこちらへ。
駅ピアノ
2019.12.25
西武池袋線、江古田駅の改札に近づいたら、ピアノの音がする。
どうもスピーカーからの音と違って、生演奏のようだ。
改札を入ったら正面のホールでピアノを弾いていた。 「駅ピアノ」!
BSのNHKで「駅ピアノ」というのをやっているが、主にヨーロッパの駅で収録したもので、たまたま通りがかった客が、ピアノの前に腰を下ろし、勝手に弾くもので、上手い人もいれば下手な人もいる。
クラシックもあればジャズもある。駅に着く人、旅立つ人、それぞれにストーリーがある。しかし、固定カメラで映し続けるだけ。でも何となく見続けてしまう不思議な番組だ。
こんな駅ピアノ、日本では見たことがなかった。 日本にもこんなのがあったらいいのに、と思っていたら、よく乗下車する江古田駅に駅ピアノがあるではないか。江古田駅が いつもと違う空間になっていた。
僕の他にも、立ち止まって聞いている人がいた。
而邸#21 西王母
2019.12.25
以前、このブログでも書いたが、自宅の生垣に植えていた錦木(にしきぎ)が温暖化のせいか元気がなくなってしまった。
そこで、白だけのいろんな種類の椿だけの生垣に植え変えた。
その中の一つが西王母という名の椿。
11月だというのに、椿にしては早くも花をつけてくれた。
この西王母という名は、中国の神話の女神の名からとったもので、西遊記にも出てくるそうだ。
花切狭で、一凛プチンと切り、和室の床柱の花活けに飾った。
これから半年間くらい、いろんな白い椿が咲くはず、楽しみだ。
ぎんきょう(GINKGO)グランドオープン
2019.12.25
目白で惜しまれて閉店しました「ぎんきょう」が再開します。
新しい場所は、小田急線東北沢駅から2分の駅からすぐの場所です。
建物の大きさは目白の時より小さくなりましたが、雰囲気はそのままに引き継いでいます。
オープンは11月25日。
Tel.03-6407-8304(2019年11月23日より)
〒155-0031 世田谷区北沢3-2-18
Tel 03-6407-8304(2019年11月23日より)
(2019年11月22日までは050-3556-5525)
地図はこちらを。
フラクタルどおりの枝
2019.12.10
裏路地を歩いていたら、このような枝が。
完璧なまでにフラクタルな枝ぶりですね。
Apartment藤 Ⅱ
2019.09.16
先日紹介したApartment藤(Fuji)の構造模型です。
木造で作るときは、何時も写真のような構造模型を作る。
材料はスチレンボードで、柱や梁の大きさに切って組み立てる。
このような構造模型を作ると、合理的な組み立て方を考えやすい。
ところで、この建物は、真ん中に中庭がある木造3階建ての集合住宅だけど、中庭には、コンクリートにキラキラと輝く美しいモザイクタイルを張った流しを作る予定。
模型の柱や梁の間の先に、そのような風景を想像しています。
設計中! Apartment Fuji
2019.08.23
池袋の駅近くに木造3階建ての集合住宅を設計中です。
地下鉄副都心線、池袋駅を出て、歩いて3~4分くらいの、超駅近。
この集合住宅のゲートをくぐると、建物に囲まれた、3層吹き抜けの中庭があります。
この中庭に面して、各階の廊下や階段があります。
だから、居住者は皆、この中庭を通って各住戸に入ります。
かつて、中国の街中にある四合院住宅で、一歩建物に入ると、静寂な中庭があったのが忘れられない。
その四合院住宅の中庭は、そう広くはなくはなかったが、3層分の高さの吹き抜けから光が落ちていた。
だから仄暗い明るさで、それがかえって中庭に親密感を漂わせていた。
計画している建物の中庭を下から見上げたところです。
外観です。
完成は来年暮。
入居募集が始まったら、またこのブログにアップします。
2019年度ニューモード Ⅱ
2019.08.16
ベトナムの菅笠を被ったままコンビに入った。
レジに品物を持って行ったら、レジの女の子がクスクス笑っている。
どうも傘を見て笑っているようだ。
胸に付けている名札を見たら「リン」とカタカナで書いてある。
ひょっとしてベトナムの子ではないかと思い「ベトナムの人?」と聞いたら、ハイ、とはにかんで答えてくれた。
さらに、カタコトの日本語で、「ドコデカッタ?」と聞いてきた。
「AMAZON!」と答えたら、二人で大笑い。
この傘はベトナムで、何というのか気になっていたので、聞いたが、よく聞き取れない発音。
そこで、紙に書いてもらった。
どうも、ノ、とロを間違っているようだが、まだ日本語がよくできないのか、それとも、ベトナム語のノは日本語のノ、とロの間にあるのかもしれない。ロを間違っているようだけど、ベトナム語のNOは日本語のロに近いのかもしれない。
2019年度ニューモード Ⅰ
2019.08.11
暑いですねー。
自宅から仕事場からへ、毎日歩いて通っているが、この暑さだと10分も歩くと、汗びっしょりになってしまう。
頭にあたる日差しも厳しく、昨年は麦藁帽子をかぶったが、麦藁帽子だと帽子の中が蒸れる。
で、今年は日傘、というのも考えたが、男にはまだ抵抗があるし、両手をハンドフリーにしておきたい。
東京都は来年の猛暑の中で開かれるオリンピックのために、日傘状の帽子を発表したが、ダサイ!
そこで自分でデザインをしてみようと思ったが、出来上がるまでは取り敢えず、ベトナムの菅笠(すげがさ)をかぶることにした。
頭と笠の間に五徳と呼ばれるものでスペースをを作るので、帽子よりは涼しい。
最初、目白通りをかぶって歩くには勇気が入ったが、今は慣れてしまった。自分自身にはこの格好が見えないというのもあるけど。
この帽子をかぶっている人をベトナムで見ても何とも思わないし、日本でも釣り人がかぶっていても、さりありなん、と思うだけ。
恰好の恥ずかしさって、何んなんだろうな、などと思索にふけ乍ら歩いている。
ところで新しい帽子のデザインだが、帽子と頭の間に隙間を作り、風が通りぬけるようにするにはどうしたらいいか、帽子自体の温度が上がらないようにするにはどうしたらいいか、といった機能的な面に、もちろんデザイン的にもかっこいいものにしたい。
こう考えると、帽子のデザインも建築の設計も同じだなーと思える。
「家づくり学校」特別公開講座
2019.08.11
泉が校長を務めています、家づくり学校で、
『家づくり学校特別公開講座開催』 を開きます。
8月25日14時~17時 、工学院大学にて
講師 三澤文子
テーマ 『建築家のなすべき仕事ー三澤文子、自分を語る』
家づくり学校の受講生以外の方々も参加頂ける講座です。
詳しくはNPO法人家づくりの会のHPイベントページをご覧ください。
二井進氏の作品
2019.08.04
僕はいろんな先生に勉強させて頂いたが、二十歳代の頃の先生は、造形作家の小野襄先生。
二井さんも小野襄先生の弟子で、僕は建築家になったが、彼は造形作家になった。
彼から個展の案内をもらい、銀座に見に行った。彼の作品はこれまでにもちょくちょく見ているが、今回の作品はこれまでと違い、新しい境地を開いた気がした。
作家にとって、新しい境地を開くのは大変なこと。同じモノ作りとして、よく分る。
記念に同じものを作ってもらえないか、頼んで帰った。この作品はマスターモデルを先ず作り、それから型取りして作ったものだから、複製を作ることができる。
1~2週間して作品が送って来て、我が家の床の間に飾った。
現代的な作品だけど、和室の床の間によく納まっている。
沖縄紀行 最終回 Ⅷ 識名園
2019.07.27
識名園(しきなえん)は那覇にある琉球王家の別邸。
第二次世界大戦で破壊されたが戦後、復元された建物。
那覇の街から遠くなく、直ぐに行ける。
識名園のシキナって、何か遠い昔、聞いたことがあるな~、シキナ、シキナ・・・、そう、オキシキナ!
プロレスラーの力道山が活躍していたころの、レフリー(審判)の沖シキナさん!
レフリーの沖シキナさんにはわからないように、覆面をしたデストロイヤーかミスターXだったかが、覆面の下に忍ばせていた凶器を取り出すのが、いつものパターン。
凶器を取り出すのが、観客にははっきりとわかるが、沖シキナは気付かない。
そして日本人レスラーに襲い掛かる。
凶器で日本人レスラーは見る見るうちに額に鮮血が…。
それでも、沖シキナさんは外人レスラーを止めに入るどころか、凶器を使っていることさえ気付かない。
観客のイライラは募るばかり。
しかし、そのいらいらが絶頂に達したころ、力道山、空手チョップが炸裂!
バッタ、バッタと外人レスラーは倒れる。
あの時のレフリーが沖シキナさんだった。
外人レスラーが凶器を使っていることに気付かない、とぼけたダメな、名役者のレフリーだった。
識名園には全く関係のない話になったが、識名という姓は沖縄に多いのだろうか。
沖識名さんも確か沖縄出身だった。
そんなことを思い出しながら識名園を見た。この識名園は本土の人にはあまり知られてないが、回遊式の庭園で、建物もいい。
園路には琉球石灰岩が敷き詰められている。
園内で、まず目についたのは、池に浮かぶ六角堂。
二重になった屋根の重みに対し、下部は六方ともガラス戸で囲まれた部屋の軽さと、外部の雨端(あまはじ)柱の直線で構成された対比が、上手い。
民芸運動の創始者、柳宗悦は沖縄の民芸についての高く評価しているが、この六角堂についても絶賛したとか。
柳宗悦の「沖縄の人文」です。
御殿は建物の南と東に沖縄特有の雨端(アマハジ)を設け、雨と日差しを遮る。
柱はチャーギと呼ばれるイヌマキの木。
この根元が大変面白い。
水に大変強く、雨端に使われるチャーギは根元の部分から使われる。
沖縄紀行 Ⅵ 中村家住宅
2019.07.22
沖縄の建物と言えば、「中村家住宅」
18世紀に建てられた、豪農の住まいで、重要文化財にも指定されれている。
写真では何度も見ていたが、実際に見たら、これはすごい!
先ず門の左右は、分厚い琉球石灰岩の塀が垂直に積んであり、正面には、門の外から内部が見えないようにしたヒンプンが立ちはだかっている。
この領域は垂直、水平に構成された規矩正しい石積みで、威厳に富んでいる。
ヒンプンを迂回して、敷地内にいると三つの建物で囲まれた中庭に入る。
玄関とは打って変わって、建物に囲まれた中庭は、静寂さと、安心感が漂いつつも、依然として気品がある。
人間の足のような形をした、チャーギと呼ばれる柱が、回廊の列柱のように並んでいる。
屋根には樋はもちろんなく、沖縄の豪雨から深い庇と、段階的に上がる床で、建物を守り、また建物の内外を連続的につないでいる。
屋敷の裏に回ると豚小屋が。
建物の裏側に、「裏座」と呼ばれる部屋がある。
この部屋がなかなかいい。
北東の奥の静かな部屋だ。
障子は引き違いと、内開きを組み合わせ、室内にいながらも、外と共にある。
寝転んで、本でも読んでいるうちに、眠りにつくことを想像してしまう。