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ゲージュツの秋 Ⅵ

2011.11.07

そうそう、先日大事なことを書くのを忘れていました。
東京造形大学の付属美術館にはジャコモ・マンズーの彫刻があります。
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背の高い作品だけど近くで見ると、
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日々このような彫刻を見て育つ学生は何と幸せなことか。
建築学科の学生にだって、こんな彫刻を日々見せたいもんだ。

ところでマンズーの作品でとくに有名なのは、
ローマ、バチカンにあるカトリックの大本山、サンピエトロ大聖堂の玄関の扉。
ホントにデッカイ扉です。
サンピエトロ大聖堂に行ったことがある人は多いと思うが、そこは美術品の宝の山。
その最初に出くわすのがこのマンズーの扉。
でも皆さん、以外と見てないよう。
もったいないです。
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詳細です。
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ゲージュツの秋 Ⅴ

2011.11.03

大学の研究室時代の先輩の小野行雄さん、
現在東京造形大学の教授をやっているんだけど、
来年3月で退職。
東京造形大は退職の時にその先生の作品展をやるようだが、
現在、小野行雄さんの展覧会「日時計に魅せられて」が開かれている。
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小野先輩が日時計の制作をやっていることは展覧会の度に見て知っていたが、
その作品も素晴らしいだけでなく、
日時計をめぐる文化全体への興味には驚かされた。

展覧会は小野さんの作った日時計だけでなく、
世界の日時計を収集したものも展示してある。
江戸時代の日時計や諸外国の新旧のもの、
さらには日時計が図案化された切手や、学術本など多岐にわたっていた。

小野さんとは30年近く前、同じ研究室で過ごしたが、
その後の人生の足取りを見る思いがした。

なお展覧会が開かれているのは、
東京造形大学のキャンパスの中にある、
白井晟一設計の美術館。

日祭日は休館で11月7日までだから4,5,7日しかないが、
興味のある方は是非。

ゲージュツの秋 Ⅳ

2011.11.01

池袋のデパートのブランドの店の前に何か気になる絵が飾ってあった。

バックが金箔で、琳派(りんぱ)のような絵だが何か変。
古い絵ではないようだし、
よく見たら、馬が十数頭にスーツを着た男たちが乗っている。
アッ、下の方にサッカーボール。
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長谷部に、本田、遠藤、長友、香川、吉田、真ん中にザッケローニ……といるではありませんか。
しゃがみ込んでシゲシゲと見ていたら、お店の人がこの絵のカードをくれた。

お店はDunhill、
店の中は見るだけでにしたけど。

青森ヒバで作った教材

2011.10.27

本を読んだり、聞いたりするより実際に体験することで何倍もの実感が得られる。

女性だけのクラス(宮脇壇さんが創設したクラス)で、
彼女らに伝統工法の木組みのことを知ってもらいたく、
昔から付き合っている大工の嶋崎(株式会社 住み家)さんに教材となる材料を作ってもらった。
嶋崎さんとは30年以上の付き合い。
腕のいい大工に何人も会って来たが、その中でも3本の指に入る尊敬する人。
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彼女たちは民家園などで民家の見学をしたことがあるようだが、
ただ格好を見て来ただけで、
大工技術の難しさ、凄さなどは本当に感じ取ることはできなかったに違いない。

伝統工法は組み方の順序があり,間違えると組み上げられない。
彼女たちが組み上げている間,僕は黙って見ていて何も教えてあげなかったから、
試行錯誤、頭をひねりひねり1時間かけてやっと組み上げることができた。
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出来上がってVサイン。

加工技術の精度を出す技術、伝統工法の強度を出す仕組み、施工手順を考える能力など、
ちょっとした体験を通してだったけど、
感じてくれたかな?
少しでも感じてくれたら万、万歳( ^ω^ )

掲載雑誌の紹介

2011.10.21

新建築社「住宅特集」11月号で、
長野県で作った住宅が掲載されています。

よろしかったらご一読を。

芸術の秋 Ⅲ

2011.10.14

間違って上野に行き、あせって六本木の国立新美術館へ。

僕の知り合いがスペースデザイン部門に沢山出していた。
かなり身近な、しかも何十年かの付き合いの人たちで、作風の変化が読めて面白い。

彫刻部門には今年、98歳で亡くなった佐藤忠良さんの「帽子・夏」が飾られていた。
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佐藤さんのアトリエを訪ねたことがある。
寒い日だったが、ストーブの前で若造相手に目をきらりと輝かせながら、少しも威張ることなく、
いろんな話を聞かせて頂いた。
その時の話で最も印象に残っているのは、
佐藤さんは厳寒のシベリヤ抑留の体験者だが、

「シベリアから西へ行くと、陸続きでパリに歩いて行ける、
日本に帰るよりも、本当にパリの方へ行きたかった」

パリは芸術の都、そちらへ行きたかった。
極限状態の中でも芸術への思いを持ち続けておられたのだろう。

芸術の秋 Ⅱ

2011.10.03

不忍池の蓮を見ていて、ふと思い出したこととは、
大昔、高校生の時に見た日本画家、徳岡神泉の画集の中にあった「蓮」。

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超写実だが、
写実を通り抜け、超現実的な幽玄の世界に引き込まれる。
蓮の上の水滴が今にも転がり落ちそう、
それどころか、水滴が落ちる時の音さえ聞こえてきそうな感じがする。
徳岡神泉26歳、1922年の作。

久しぶりに古くなった画集を開いてみたが、やはり凄い。

芸術の秋 Ⅰ

2011.10.01

「新制作展」と言う公募展があります。
彫刻の佐藤忠良、船越保武、絵画では猪熊 弦一郎、
スペースデザイン部門では丹下健三、前川国男、吉村順三、
それに僕の先生もその部門を引っ張ってきた。
そうそうたるメンバーがいた長い歴史のある公募展です。
以上の人はみんな亡くなったけど、
僕の先生の弟子(兄弟弟子にあたる)たちは出品し続けていて、先週見に行ってきた。

現在は新しくできた国立新美術館で開かれているけど、
それまでは何十年も上野の東京都美術館で開かれてきた。
長い間見続けてき僕にとって「新制作展」と言えば上野の山、と先入観がある。

先週行ったとき、ついつい上野の方へ行ってしまった。
あっ、いけない、間違っていると気付いたのは上野の山を登る途中。
そういう人はけっこういるらしい。

日曜日と言うこともあって、まぁ~いいかと不忍池をぶらりと散歩。
不忍池には蓮がびっしりと群生している。
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蓮は不思議な植物。
沼からすっと茎が立ちあがって大きな丸い葉を持ちあげている。
葉の下はひっそりとしているが、よく見ると小さな生物がうごめく、近い景色の空間が広がる。
一方、葉の上は空の下で葉がずっと連なり、向こうまで見渡せる開放的な、遠い景色の空間だ。
遠い景色と近い景色、それぞれ違った両方の世界を同時に見ることができる植物だ。

蓮を見ていて、ふと思い出したことがあった。
それは次回に。

新宿3丁目交差点でデザイン分析を

2011.09.27

どこの建物と思いますか?
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新宿伊勢丹です。
おなじみのデパートだけど、建物を良く見た人は意外と少ないようだ。
アールデコのデザインで、昭和8年ころに建ったらしい。
なかなかのもである。

この写真は明治通り側のもので、新宿通側と若干デザインが違うが、どちらも同じモチーフを使っている。
1階と2階の間に御影石で作った帯状のレリーフが走っている。
このレリーフを良く見ると、縦方向には6分割してある。
その6段をどのように考えながらデザインしていったか?と思いながら見ると結構勉強になる。

40年後に…

2011.09.21

古いビルをお買いになった方がいて、
改装したいとのこと。

しかし改装工事といっても、
マンションの一室ぐらいだったらどうってことないが、
大きめの改装だと、配管やら耐震性能のチェックなどいろんな問題が出てくる。
しかも現場は遠い。

でもオーナーはこのビルに大変な愛着を持っておられるようで、
トイレの金具を自らピカピカに磨いておられた。
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40年前の男子トイレの金具とは思えないほどピカピカ
40年前と言えば、自分は何歳の時、その時のものかーと、いたく感動。
新品同様というか、それ以上。

オーナーがこれだけ愛着を持っているのであれば、
仕事をして応えないわけにはいかない。

しかも、天井裏のコンクリートの打設状態を見たらいい施工をしていた。
設計事務所の監理がきっちりしていたようだ。
デザインもその当時としてはかなりいい。
40年前の設計者がどのような人だったかは分からない。
ひょっとして、もう亡くなっているかもしれない。

後世にそれを見た設計者に評価される、
素晴らしいことだ。

Apartment五風 Ⅱ

2011.09.14

「泉さん、この照明器具を付けて欲しいんですけど・・・・」と、
建て主さんに言われることがたまにある。
念願の新築をしたら付けようと思い、買っておいたものだ。

Apartment五風の建て主さんが、
「デザインが合わなかったらいいんですけど・・・・、どこかに使っていただけませんか・・・・?」と、
骨董品ぽい照明器具をおずおずと出された。

そのような時、できるだけ使ってあげようと思うが、
どうしても合わなそうなものだと困ってしまう。

しかし今回は、見た途端コレハイケル、OKと咄嗟に思った。

Apartment五風のオーナー住戸の階段室です。
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建て主さんが持っていたロシアの?照明器具で、
少し壊れていて手直しして付けたが、階段室によく合った。
壁に当たった光の模様が♥型でかわいい、
それに階段室のボリュームにもあっている。
流石、お茶をやっている人はセンスのいい物を持っているもんだ。

Apartment五風 Ⅰ

2011.09.12

西荻に「Apartment五風」と言う変わった名の集合住宅ができました。
集合住宅と言っても、賃貸住宅が3軒、それにオーナーの自宅。
オーナーの自宅には8畳、広間の茶室がある。

茶室の名は五風軒。
五風軒の名は建て主さんが持っていた熊谷守一さんの書の「五風十雨」からとった。
五風十雨の意は、
五日ごとに風が吹き、十日ごとに雨が降るように気候が穏やかで、豊作の兆しがあり、世の中が平穏無事であるたとえ。

茶室は「五風軒」、アパートは「Apartment五風」にした。
茶室の入り口に欠ける扁額です。
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いいでしょう?
作ってくれたのは望月通陽さん。
望月さんには表札の字などをお願いしているが、
書けそうでなかなか書けない字。
ときどき自分で書こうと思うが、
彼の字にはかなわない。
それに彼の字は僕の建物にぴったり。

この扁額で建物に魂が入ったようです。

白雲木

2011.09.09

震災以来、植物のことを書くのを忘れていた。
ススキに続き植物の話です。

先日、茶事で駒込を歩いていたら、
ブドウのような実がなっている街路樹が。
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ぶら下がっていた樹名を書いたカードには「ハクウンボク」とある。
早速事務所に帰って調べてみたら「白雲木」と書くそうだ。

さらに調べてみたら春にはこのような花が咲くらしい。
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いやー、綺麗。
雲がたなびいているように見えるからこの名前がついたのかも。
広めの庭のある家に使えそうだ。
春になったらまた見に行ってみたい。

ススキは逆光が美しい

2011.09.05

今年の夏も暑かった。

昨年から夏はもっぱら半ズボン。
人に会う時、失礼かな?と思いながらも一度これにしたらやめられない。
それに節電という言い訳が今年はあった。
銀座にも堂々とこれで行った。
今年の夏、長いズボンをはいたのは二三度。
一度は講演会、それに茶事の時。

一昨日、銚子に近い千葉県の旭にある現場から帰る途中の国道沿いに、
逆光に映える銀白のススキがたなびいていて、ほんとうに美しかった。

今年も、もうチョイで半ズボンとおさらばです。
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建具の本

2011.09.01

世の中にはマイナーで、一部の世界でしか知られてないニッチな、でもいい本がある。
建具屋の荒川義昭さんから紹介してもらった「建具製作教本」全3冊。

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この本の「はじめ」には、

・・・・、多年渇望の「建具製作技術の奥義」とも申すべき書を刊行することになりました。
わが業界として最も大切な技術を現代から後世に伝えることは、
当連合会に課せられた重大な責任であり、かつ崇高な使命であります。
・…古くから伝わる高度の技術は、「父子相伝」とか、「門外不出」とかいわれて参りましたが、
当連合会では全国各地に居られる全国建具組合連合会技術委員会各位の
長年に亘って練磨された技術を惜しみなく公開していただいた次第であります。
近代建築様式の推移により、古い時代の建具は次第に需要が少なくなりましたが、
いつの日か再び必ず求められ、この教本が指導的役割を果たす日が参ることと固く信じています。・・・

とある。
僕の父親の世代の懐かしい口調だが、言葉の内容通りの本だ。

建具のことを大学で教えてくれるはずもなく、
建具のことは建具屋と仕事をする中で教わって来た。
他の職種のことでも同じ。

ところが、である。
上手いと言われる設計者はこのよな勉強を良くやっているもの。

一度、手にしたら一生の宝ものになるような本だ。
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角叉のつながり

2011.08.24

角叉、つのまた、と読みます。
これが角叉。
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角叉と言うのは海藻で、葉の先が二つに分かれて角のようになっているから。
食品にも使われるようだが、左官材料としても重要なものだ。
角叉を煮出したものを漆喰や土に混ぜることによって鏝の滑りをよくする保水効果がある。

で、何でこの角叉の話になったかと言うと・・・・、
現在仙台でやっている住宅の現場に石巻出身の今野さんという左官屋が入っているが、
この今野さん、家も、左官道具、材料もぜんぶ津波で流されてしまった。
そこで心配した全国に散らばる左官屋の仲間が、
今野さんが仕事ができるように左官道具や材料の一式を送ってあげた。
バケツはこのブログでも紹介したインチキ左官屋、こと植田さんが送ったようだ。
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この現場で使う角叉も皆が送ってくれたもの。
僕の仕事まで恩恵を受けたわけだ。

被災者にとっては住まいも必要だが、
仕事ができないとどうにもならない。
仕事って生きることそのもの、仕事があればどうにかなる。

今野さんとの仕事は初めてだったが、
角叉で植田さんたち、今野さん、それに僕までつながっていた。
申し訳ない気持ちと同時に、たまらなく、うれしかった。

お盆はこんな車で旅したかった

2011.08.14

仕事場の駐車場にとまっていた車。
おっ!この車、ジャロジー(ルーバー窓のこと)が付いているではありませんか。
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中をのぞいたら、流し台も付いていてキャンピングカーともして使えるようだし、
ジャロジーが付いているから風も入りエコ、そして安心して寝られる。
でも、蚊がいたら刺されるなー、と住宅作家らしい疑問がわいたが、
チャンと網戸も付いている、建築的車ではありませんか。
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車のことはそんなに詳しくないのだけど、
この車、フォルクスワーゲンのタイプ2と言う1970年代の車で、
僕が最初に車を買った時に、友人から「泉さんはこれだよねー」と勧められた車だから、たまたま知っていた。

結局、この車は買わなかったけど、今見ると本当に楽しそうな車だ。
http://www.safetv.me/watch/ZWoJSIszc_s/VW-Buses-over-Skyway..Arrival-at-park.html

春を恨んだりはしない Ⅱ

2011.08.09

池澤夏樹さん、有名な芥川賞作家だけど、この人の名前はなかなか覚えられない。
知っているんだけど、どうしてもスッと出てこない名前の一人。
むしろ、昔の人だけどこの人のお父さん、福永武彦の名前の方はスッと出てくる。

で、なかなか思い出しにくい名前の池澤さんが、3.11の後、新聞で連載しているコラムがよく、いつも読んでいる。

池澤さんは昔、物理学を学んだ小説家だからか、明快な論理の展開を維持しながら、上っ面でない深いところまで話をもって行く。

反原発の論理で何時か書いた高木仁三郎さんもそうだけど、池澤夏樹さんの文もいい。

そう長くはない文なので、是非ご一読を。
次を開けると、「楽しい終末」「光の指で触れ」がDownn Loadができます。
http://www.impala.jp/3.11/index.html

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