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而邸 ⅩⅩ

2017.04.12

而邸(自邸)を作り、引っ越してきたのは9年前の今頃。

枝垂桜を庭に植えたが、花が咲いてたかあまり記憶にない。まだ植えたばっかりでそんなに咲いてなかったのだろう。

9年経つとこんなになるのか、というくらい大きくなった。

今年も美しく咲いてくれた。

森本喜久男さんの本 ☆☆☆

2017.04.08

もう10年くらい前になると思うが、是非ある人に会いたくなりカンボジアへ行ったことがある。

そのちょっと前、博士論文を書いていて毎日朝帰りが続いていた。昼間は設計の仕事をしていて、論文を書けるのは夜中しかない。家に帰るのはいつも朝方。帰りの車の中で「ラジオ深夜便」を聞きながら帰るのが日課になっていた。いろんな人が自分の生きざまについて語る番組だが、ある日、カンボジアで絹織物を再興した人の話が流れていた。

カンボジアは隣国のベトナム戦争の後も混乱が続き、虐殺で何百万人という人が死に、国全体が疲弊しきった状況にあった。そんな中で、カンボジアの伝統的な絹織物の生産システム、文化も壊滅状態にあったが、森本喜久男さんという人がカンボジアに入って、その壊滅状態にあった絹織物を再び再興した話を、とつとつとしていた。絹織物の生産システム全体が崩壊しているわけだから、まずは蚕を探すこと、桑の木を植えること、伝統的織物技術を持っている人を探し出すこと・・・を一から始めなければならない。

それはある意味、一つの世界を生み出すようなもの。人や、環境、経済、技術を統合して初めて絹織物を作ることが出き、ある一つの世界システムを作り出すようなものだ。

この話が衝撃だったのは、僕は集合住宅で村のような、人々のコミュニティーのある世界を作りたいと思い続けていたからだが、僕が考えているレベルをはるかに超えた、考えていたことが吹っ飛ぶくらいの、本当のリアリティーに根差した村を作った人がいるんだ!と感激した。

論文を書き上げ、審査に合格したら是非森本さんに会ってみたいと思い続けながら頑張り、運よく合格し、森本さんに会いに行くことができた。

僕が行った頃はロレックス賞などをすでに受賞され、それなりに有名だったようだが、まだ訪れる人は今ほどではなかったようだ。今では年に2000人程の見学者がいるらしい。

おじゃまになったかもしれないが、温かく迎えていただき、森本さんの村を見学させて頂いた。

この森本さんの最近の本です。

どちらも素晴らしい本です。

単なる絹織物の再生という話にとどまらず、生き方を語った本と言っていいでしょう。

是非若い人に読んでもらいたい。

型にはまった人生もあるかもしれないが、自由に生きることがどれだけ素晴らしいか、を伝えてくれる本です。

高知、愛媛の旅 Ⅲ 牧野富太郎記念館

2017.03.30

練馬区大泉に牧野記念庭園というのがあり、また以前、非常勤講師で通っていた南大沢の首都大学東京(昔の東京都立大学)のキャンパスの中にも牧野標本館という建物があり、さらに高知には高知県立牧野植物園というのがあって、その中に牧野富太郎記念館という建物がある、という具合にいろいろと牧野富太郎関連の建物があって、なんだろうと思っていた。

大泉は牧野富太郎の住まいがあったところ、首都大学東京は牧野富太郎が収集した植物の標本を保管しているところ、そして高知は彼の生誕地だったということだそうだ。それにしても科学者でこれだけの建物があるのは珍しい。

その中で、今回の旅で見たのは牧野富太郎植物園と、その中にある牧野富太郎記念館。

素晴らしい建物だった。建物の目的から、外部空間にある植物と、記念館としての内部空間を持った建築を絡み合わせなければならなくなる。そのようなことから内外融通無碍の空間をどのように作り出すかは大きなテーマになることが必然だったのだろう。いわゆる内部と外部の中間領域をさまざまな手法で作り出し、それがこの建築の自然さを生み出している。

 

また、植物園だから外部を散策することになり、植物と一体になった外構工事も素晴らしかった。

この牧野富太郎記念館の建物も素晴らしかったが、もっとも感激したのはこの展示。

恐らく晩年の大泉時代の牧野富太郎の姿なのだろう。

植物をスケッチしている。

牧野富太郎は朝明で96歳まで生きたようだが、

年をとっても自分の仕事に人生をささげ続けた姿が何とも神々しかった!

私もかくありたい。

 

 

高知、愛媛の旅 Ⅱ 無患子

2017.03.24

吉良川の街並みの特徴は水切り瓦を重ねた蔵にあるが、もう一つ 「石ぐろ」という石塀も魅力的。

この石塀、下の方は大きい石積みだが、上部は小さい丸い石積み。

ただ小さな丸い石積みというだけでなく、割った石のようだ。

よく見てみると、

本当に割った石を積んでいる。

それもラグビーのボールのような楕円の石を二つに割ったもの。

海辺を見たら確かにラグビーボールのような石がたくさんあった。

 

この石は2~30年前に三宅島の海岸で拾ったもの。

あまりにも真ん丸なので、今でも大事に取っている。

海岸で波に洗われるうちに段々丸くなるのだろう。

吉良川はラグビーボール型、三宅島はまん丸、その違いはどうして生まれるのか?

石の目、石理の違い?それとも海岸の形状の違い?

 

この吉良川町で、珍しい植物の種も見つけた。

無患子(むくろじ)という植物の実。

半透明の殻の中に実が入っている。

これも宝になりそう。

 

 

高知、愛媛の旅 Ⅰ

2017.03.17

「家づくり学校」では毎年この季節になると修学旅行をやっている。もちろん建築を見て歩く旅行で、先生も生徒も建築が好きな連中ばかりだから、建物を前にしてあーだ、こーだと言いながらの旅で、これが本当に楽しい。待ちに待った修学旅行です。今年は高知から愛媛へ抜ける竜馬の脱藩ルート。

最初は吉良川の街並み見学。吉良川は室戸岬に近く台風銀座。日本の風雨の強いところでは瓦の隙間から水が侵入しないように漆喰で守っているが、特にこの高知は瓦の周りのいたるところが漆喰で覆われ、さらに水切り瓦が外壁に何重にも付けられている。

漆喰はもちろん土佐漆喰。土佐漆喰は藁を何度も入れて発酵させ、残った繊維分で強度を高める。土佐漆喰は、白い左官壁に使ったことがあるし、またハンダという粘土と土佐漆喰を半々に混ぜるものがあるが、それによく使ってきた。普通の漆喰より強い。

高知では瓦を漆喰で頑丈に固めるため、瓦は瓦屋というよりむしろ左官屋の仕事だったとか。

かつて高知の蔵の水切り瓦のド迫力を見て感激し、瓦の代わりに板金の水切り付けたことがある。比較すること自体に無理があるかもしれないが、高知の蔵にはかなわない。

 

もう桜

2017.03.06

春の兆しを感じ始めた今日この頃だが、

事務所の近くで、もう桜の花が。

小さな花がたくさんついて、ソメイヨシノよりずっと赤い。

何という名前の桜だろうと思ったが、

桜と言っても、その種類は膨大だとか。

1月から12月まで、それぞれの月に咲く桜があるというぐらい。

彼岸桜?緋寒桜?それとも・・・・?

いろいろ調べたら、おかめ桜のようだ。

おかめ桜は淡い紅色の一重咲きで、花が下を向いて咲くのが特徴というから、これにに違いないと思うが、確信はない。

 

第九期 家づくり学校開講 受講生募集中

2017.03.05

私が校長を務めています「家づくり学校」第9期が生徒募集中です。

家づくり学校は、はや9年目、たくさんの卒業生を送り出しました。

住宅設計をちゃんと学び直したい人は是非来てください。

住宅に熱い思いを持った人々との輪の中で、勉強してみませんか。

詳しくは、

http://npo-iezukurinokai.jp/gakkou/

おうちにお寺?

2017.02.24

建物が出来上がると子供は初めて見る我が家に大はしゃぎ。

特に,最近できたこの家のようにスキップフロアーの家は楽しく、友達を連れてきてはあっちへ行ったり、こっちへ行ったり走り回っている。

 

その子供たちが家の中で「お寺に行こう」と言ってるらしい。

新築の住宅なのに、「お寺に行こう」とはどういうこと?

そのお寺とは和室のことらしい。

多分、法事かなんかでお寺に行き、畳や障子を体験したのだろう。

和室が少なくなり、今や和室は絶滅危惧種寸前。畳や障子を見るとお寺のイメージに結びついてしまうのだろう。

確かに建築学科の大学生でも自宅に和室のない子がかなりいる。

子供に和室の文化をぜひ残したいものだ。

 

 

 

サピエンス全史

2017.02.11

今話題の本です。

世界中で売れているらしい。
成る程と納得。
われわれ人間の歴史を誕生から現代まで追った本だが、
歴史書というより、「人間とは何か」を問うた本。
学校の歴史の教科書ほど面白くないものはないが、
このような本だったら文句なく勉強したくなっただろう。
大学の一般教養の本として使ったらいいなー。

 

手帳

2017.02.01

予定も書け、日記も書ける手帳でいいものはないかなー、と長年探していた。
今や、スマホに予定を入れる人が多くなっているが、僕はスマホを持っていない。
相変わらず、ガラケー。
スマホは出始めの頃、結構早く使ったが、仕事時はパソコンの画面に向き合っていることが多く、もうこれ以上PCに向かい合いたくない!とスマホはやめにした。
PCばかり眺めていると、人間が本来持っている感覚がダメになっていくような気がする。
字を書いたり、紙の本をちゃんと読むと心が落ち着く。

ということで、予定も日記も書ける手帳を持つことになった。
でも、これがまたなかなかいい手帳がない。
いろんな手帳を試みたが、結局下のようなものになった。

MUJIの横線だけの手帳の表紙をはぎ取ったものを2冊重ね、表紙は和紙作家さんが漉いた和紙で作った自家製の手作り。
栞も3本付け、予定と日記のところ、それにメモ覧で使う。
また手帳が開かないように、手帳の色にあったベルトも付けている。
このベルトの色がポイントで、手帳の品が変わる。

手帳の予定表は毎年1年分、手書きで作る。
初めの頃はこの予定表を作るのが面倒だったが、慣れてくると大したことはない。
表を作りながら、今年はどんな年になるかなーと、思いながら作るのがけっこう楽しい。

使い終わると、和紙作家さんの表紙を剥がし、過去の手帳にはぎ合せ1冊の分厚い手帳になっている。

リノベ参入

2017.01.26

以前、仕事を頼まれた建て主さんから、

結婚したんで、実家の建物を改修して住まいたいんだけど、

泉さん、改修工事なんてやってくれます?とのこと。

とっても楽しい建て主さんだったので、二つ返事でハイ、ハイ。

実は大昔、駆け出しのの頃、改修の仕事を結構やっていた。

改修個所は水回りが多く、大変勉強になったことを覚えている。

建物は水回りが一番傷みやすく、そうならないようにするにはどうしたらいいか、大変勉強になった。

この建て主さんのお父さんは大工さんで、建物はお父さんが残してくれたもの。

当然、建て主さんは父親への敬意もあり、リノベーションをして使い続けたかった。

改修の基本は父お父さんが作った木造建築の木の感じを残しつつ、
レトロな感じの中に若々しいデザインに変えること。

8畳二間の畳を剥がし、16畳の板の間のリビングに変えた。

キリッとした感じになった。

床材はざらざらとした古民家風のもの。

玄関の一部分は吹き抜けにし、2階と小窓でつなぎ、気配を感じられるようにした。

リノベーションの何といっても面白いところは、
古い材を生かし、住まいの年月を感じさせることができること。
新築では絶対にできないことがある。

玄関は鉄平石の周りを洗い出しで仕上げた。

新築は頭の中で考えるが、リノベは目の前にあるものとの対話。
この対話が楽しい。
今までにたくさんのモノづくりの手法を身に着けてきたので、
リノベにこの手法を生かすことができる。
これまでリノベはどちらかというと避けてきたが、
新しい世界が開ける予感がした。

而邸 ⅩⅨ 太鼓障子

2017.01.21

而邸(自宅)の寝室の入り口は太鼓障子になっている。

太鼓障子とは、両面に障子紙を張った建具のことで光を通し、よく茶室に使われてきた。障子襖(しょうじぶすま)と呼ぶこともある。

今はまだ太陽の高度が低いから、目を覚ますころ、この太鼓襖に窓ガラス越しの朝日が当たっている。

両面が障子紙だから、薄暗い室内で障子自体が輝いて見える。

美しい。

こういう美しさは、何と言っていいのだろう?

一般的に言われる美術品とは違った美しさ。

これこそインスタレーションではないか。

また建築の美学はこんなところにあるのかもしれない。

 

みんなで住むの原点

2017.01.14

元旦の新聞にゴリラの研究者、山極寿一さんという方のインタビュー記事が出ていた。

思わず引き込まれてしまう内容に、山極先生の本を探し求める。

何冊も本を出しておられる方だが、「サル化」する人間社会、をさっそく買う。

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

この本に惹かれたのは集合住宅の設計をやってきたからかもしれない。

建築の設計をやっていて、特にこの東京という街では、人間関係や家と家の関係がバラバラに断絶しつつあることが大変気になっていた。じわりじわりと人間関係における寂しが増し、不幸な街になってきているような気がする。

そんなことから皆が適度な距離を保ちつつも、一つの場所に対する共有感を持てるような集合住宅の設計目指してきた。

山極先生の本によると、ゴリラはチンパンジーなどのサルとは違い、自分以外のものの気持ちを理解する能力、共感能力がとっても高いらしく、集団に対する帰属意識も高い。

一方、チンパンジーなどのサルは個々がバラバラで、それは自由だともいえるが、孤独。

東京の人間はチンパンジー的!

アフリカの森のゴリラの方が余程いい世界を作っているなー、と感心することしきり。

と言って、この本を読めばどういう風に共同住宅を設計すればいいか、ということにはつながらないが、(あまりにも普通な言い方だけど)みんなが幸せになれる共同住宅の設計がいかに重要か、ということの思いを強くした。

現在掲載中の雑誌

2017.01.05

専門家向けの雑誌ですが、

彰国社の雑誌「ディテール」の211号に「工/手の家」が掲載されています。

ディテール 2017年 01 月号 [雑誌]

よろしかったらご一読を。

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美しい階段を目指して

2016.12.31

今年の仕事納めは鉄工所へ。

今作っている住宅の階段はリビングの中にあって目立つ存在。

美しく軽やかに上階へと飛翔してほしい。

そのような階段を、鉄筋トラスのササラ桁で考えた。

しかも階段全体としては螺旋と直線の組み合わせ。

模型を作ってみないと、どう構成していいか、またディテールもわからない。

そこでいくつも模型を作った。

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手すりなどはついてないが、最終の形に近いもの。

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これが製作現場の様子です。

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カーブが自然と流れるのが難しい。

鉄工所の松田さんがよくやってくれた。

暮れも押し詰まった、製作現場でのいい仕事納めだった。

 

 

 

まさかのことが多々起こった今年

2016.12.23

トランプの勝利や、イギリスのユーロからの脱退、テロなどまさかと思うようなことが今年はいろいろとおこり、世界が激動し始めた感がある。

そんな中で、駅の売店で思わず買った雑誌、週刊「東洋経済」の「ビジネスマンのための近現代史」が面白かった。

ナショナリズムや、ポピュリズム、保護主義などの基礎知識を分かりやすく解説してくれている。

週刊東洋経済 2016年12/24号 [雑誌]

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七竈(ななかまど)

2016.12.22

ナナカマドって変な名前だと以前より思っていた。

調べてみたら七竈 と書くらしく、

材が硬く、燃えにくく、7回かまどにくべても燃え残るためだとか。

下の写真は、冬になってもたくさんの枝が残るナナカマドを道路に面した窓の前に植え、道路との緩衝となるように植えたもの。

 

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本の紹介「現代音楽のゆくへ 黄昏の調べ」☆☆

2016.12.10

現代音楽がなぜ不人気なのか、そしてその不人気な現代音楽はどのようにしたら人々に受け入れられるようになるのか、といったことを論じた本。
もともと現代音楽はわかりずらく不人気だったが、さらに最近は演奏される機会も減っているようだ。
やはり人気がないのだろう。

で、そんな現代音楽を論じる本だが、この本の「現代音楽」という言葉を「建築」という言葉に置き換えても読むこともできる。
建築は現実社会での用途が前提とされるから、現代音楽のように「人にわかんなくっても、俺が描きたいように作曲するだけ」という具合にはいかないが、建築にも多少なりとも一般の人には理解され難い傾向があるのも事実だ。
現代音楽の不人気の理由を、新しさが常に求められる「近代」にあるとし、その歴史的変遷のキーワードとして、構成、モダン、ポストモダン、キッチュ、ミニマリズム、素材の自由化、コラージュなどが出てくる。
なんだ建築と一緒じゃん!と驚かされる。
音楽、絵画、建築などあらゆる芸術が関係性を持ちながら同時代的に進行しているんですね。
この本を読むことで、我が建築の世界を逆に照らし出されるような気がした。
黄昏の調べ: 現代音楽の行方

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