椿 Ⅳ 芸術家の墓

2014.04.26

先日の法然院の続き。
法然院に谷崎潤一郎の墓★☆☆あると知り、谷崎の墓を探索。
建築家は墓のデザインをやることがあり、死後のお家にも多少の関心がある。

事務所の近くには雑司ヶ谷霊園があり、文豪夏目漱石やジョン万次郎など有名人の墓がある。
でも、霊園で目当ての人の墓を見つけ出してもそう感激しない。
あっ、そうという程度で、
それは生前から本人が用意したものでない限り、他者が作ったものだからに違いない。

ところが谷崎の墓はちょっと変わっていた。

谷崎は「男子は女子に支配され、 そのために身を滅ぼすところに、男性として最高の幸福がある」なんて言うほどの審美主義、耽美主義の人、さらに言っちゃえば変人の大大文豪。
は~ぁ[E:sad]
そんな人らしい墓だった。
墓地の中の遠くに、たった一本の枝垂桜が満開でそこだけが妙に艶やかに華やいでいた。
おそらくあの下に谷崎の墓があるに違いないと目星をつけたが、やはりそうだった。
Img_1862
おそらくこの墓は生前に「こうする」と全部、谷崎が自分で決めたものに違いない。
枝垂桜の下に、自然石を使い、掘る文字も自分で書いて用意し、なにからなにまで自分でゼーンブ用意したものだと思う。
枝垂桜の種類まで決めたのではなかろうか。
Img_1858
そんなふうで、他の墓と違い、谷崎の墓には一つの世界、空間が生まれていた。
死後の世界まで自分をどう見せるか、芸術家のその表現意欲に圧倒させられる思いがした。

枝垂桜の下には墓石が二つあり、
一つが谷崎と3番目の夫人、松子が眠るもので、「寂」と谷崎が揮毫。
もう一つが「細雪」の雪子のモデルの一家の墓で、「空」とある。
Img_1860
あ~~、なんか久しぶりに凄いもの、怖いものを見た感じだった。