地震・津波・原発 Ⅴ

2011.04.07

未曾有の大災害に対し建築家に何ができるか?
地震の後、ずっと考えてきた。
ハウスメーカーはまだ足りないとはいえ、大量の仮設住宅を用意することができた。
しかし建築家はこの事態に対し、せいぜいやることができたのは避難所のプライバシーを守るための間仕切りをやっ、たくらい。
家を失い震え上がっている人々には何もできなかったのだ。
しばらくは僕らって何なんだろうと自虐的になっていた。

地震後一カ月近くなり建築界では学会を中心として復興計画が動き出した。
なるほど、僕らの役割は今回の被害を踏まえよりよい未来への提案し、実現化の手法を編み出すこと、なのだ。

今、心ある建築家たちが復興計画の在り方について考えていることは、
新しい開発の哲学、その手法は何か、ということではないか。
被災地には人間と自然が共生する中で築いてきた多様な地域性や文化がある。
それらを継続する復興が求められる。
だからその主体はその地域に生活する人々でなければならず、自力更生的復興でありたい。
だから均一化、標準化、効率化ではなく、多様化、混在、幸福、と言ったことが哲学として求められる。

しかし、果たしてこのような哲学を多くの人々がどのようにして共有できるようになるか、
その具体的手法は何か、多くの課題がある。

このまま放っておくと、また戦後日本が歩んできた近代化の手法にやられてしまうだろう。
利権が渦巻く中での復興であってほしくない。
今ほど建築家がわかりやすく、これからあるべき住の風景についての哲学を語り、実行に移すべき時は他にないのではないか。