最近読んだ本
2025.10.30
久しぶりに 「最近読んだ本」です。
西洋の敗北 エマニュエル・トッド
話題の本だが、TVに出演しているトッドに興味をもち手にした。
話題になる本というのは自分が知らなかった世界に目を開かせてくれるが、この本もそうだった。世界の家族形態の類型や各国の様々な統計の推移からその社会の未来を大よそ読み解くことができることにびっくり。
アメリカ、ロシア、ドイツ、ウクライナ・・・、など世界の国々の見方がガラリと変わってしまった。
そしてウクライナの戦争の見方が変わった。
トッド人類史入門 エマニュエル・トッド 片山杜秀 佐藤優
上記の「西洋の敗北」は大部の本で、その入門書がこの「トッド人類史入門」。
片山杜秀さん、佐藤優さんという論客がやさしく解説してくれている、正しく入門書。
天使も踏むを畏れるところ 松家仁之
建築家、吉村順三をモデルにした小説。吉村順三は皇居新宮殿(正月に皇族の方々が並ばれて、その下でみんなが万歳三唱をする建物)の設計者だったが、彼は基本設計までやって、この仕事から降りた。
実施設計以降は宮内庁の官僚、ゼネコンのスタッフたちによって進められた。当然、吉村順三は宮殿という国家プロジェクトでもあり最後までこの仕事を成し遂げたかっただろうが、宮内庁の官僚の前で思うようにプロジェクトを進めることができず、自らこの仕事を降りる。
忸怩たる思いがあったことは想像に難くない。
その経緯を通して吉村順三の建築に向かう姿勢や、それに関わった作家や官僚、さらには皇室の方々も登場する。
職業を正面から取り上げた小説はめったにないが、この本の著者は建築をよく理解されていて脱帽というしかない。
ついでにこの「天使も踏むを畏れるところ」の出版の前に著者の松家さんには「火山のふもとで」という本も書かれている。
この本も吉村順三を描いた本で、こちらも建築を、特に住宅をやっている人なら間違いなく面白いと思うはず。
人間の大地 サン=テグジュペリ
サン=テグジュペリは「星の王子様」(童話?)でつとに有名。でも他に(大人向け?)の名作が沢山ある。
若い時にサン=テグジュペリの全集が出て、この「人間の大池」も読んだことがある。
50年以上前のことで、あまり良く覚えていなかったが、再読してこんなに面白い本だったのかと驚いた。
昔読んだ時はよく理解できていなかったのだろう。
上記の「天使も踏むを畏れるところ」は建築家という職業の主人公だが、この本は飛行機操縦士という職業のサン=テグジュペリの実体験も元に書かれたもので、職業を通して世界観、人間観にまで広がった深い思索が描かれ、その力強さと深さに共感する。
自分にとっても建築はやはり生きることそのものと言っていいようなもの。建築を通して世界を見る目が広がったと思えるからなおさらだ。
貫の楔 »