なすこんしゃ

2024.03.13

日頃持ち歩くバックにこれという気に入るものがなく、長い間探し続けていた。
ある時、かばん屋の前を歩いていて、ふと店を覗いたら、奥から訴えるように輝いているバッグがあった。これっ!!と思った。
この店は製造販売している店なので、若干の手直しはやってくれるとのことで、肩にかけるベルトの幅は少し広くし、ずれないようにしてもらった。
またバックの中のポケットは4つだったものを6つにして、いろんなものを整理して入れられるようにカスタマイズしてもらった。
気に入っていたので、毎日長い間使い続け、ずいぶん傷んでしまった。

久し振りに、ご夫婦でやっておられるこの店、なすこんしゃに行ったら、少しお歳を召しておられたが、以前注文したことを覚えておられた。
今回はA4が入りやすいように幅を15ミリ、また高さを10ミリ伸ばしてもらった。
また前のカバンよりも皮がイタリア製の牛皮になり、さらに良くなった。

建築の仕事をしていると、建築以外の物でも大体の原価が想像つく。
これを作るのに大よそ何日かかり、材料費を入れて大体このくらいだろうと計算する。
これを作ったご主人に聞いたら、このバックで2日位かかるとのことで、ピッタリだった。
これに材料費やらなんやらを入れたら,この売値ではもうからない仕事だなー、と思った。
とともに、感謝したい気持ちで一杯になった。
だから黒バージョンもお願いした。
(なすこんしゃは神楽坂、赤城神社横の坂道を下った右側)

それでも街にはこのバックより安いバックがあふれているが、それは大量生産されたもの。
にもかかわらずブランド品になるとこのバックよりはるかに高い。
手作りの一品生産は価格では大量生産品には太刀打ちできない。
しかし、味わいが全く違う。
この鞄の縫い目は丁寧に揃うように縫ってある。
見ただけで心が入っていることが分かる。
プレファブと職人の手仕事による住宅では全く異なるのと同じで、建築と同じ世界だなー、と思った。
職人の誠実な仕事がもっと認められる世の中であって欲しい。

茶バージョン
黒バージョン